そんなホクホクとした気分で、クルマを走らせてみると、さらに美点を見つけてしまいました。乗り心地がなかなかに良いのです。
段差や道のうねりを上手にいなして、フラットな姿勢を保ちます。ハンドル操作を軽くするためパワーアシストが強めで微小舵の手ごたえはいまいちですが、狙ったラインをきれいにトレースして走ることができました。パワー感は必要十分。静粛性も価格なりです。
何かがすごいわけではありませんが、走る・曲がる・止まるという基本に悪癖はありません。ごく真っ当な走りに好感が持てました。むやみに背を高くして広い室内空間を欲張らなかったことで、クルマが軽くできたのが、自然な走りを実現できた理由でしょう。
シンプルなデザインで、充実の安全装備をお手頃価格で実現した新型「ミラ トコット」。肩肘張った感じがなく、「ごく普通で良いもの」といった印象です。身近な製品でいえば、「無印良品」や「ユニクロ」が近いのではないでしょうか。
ダイハツは「女性に向けて開発した」と言いますが、オジサンだって「無印良品」や「ユニクロ」は大好き。最近の軽自動車は、ギラギラに格好つけたクルマが増えていますが、そういうクルマはオジサンにとっては、正直なところ厳しく感じます。素の良さを追求したシンプルで充実内容の「ミラ トコット」は、小生のように考えるオジサンに受けるのではないでしょうか。
●文/鈴木ケンイチ(モータージャーナリスト)