1990年代、世間を大いに賑わせたのがヘアヌードブーム。女優の石田えりも、1993年3月に『罪(immorale)』という写真を発表した。写真評論家の高橋周平氏が同作について語る。
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今見返してみると、石田えりさんの肌とマッチした色使いが綺麗でカッコいいですね。この中から1枚選ぶなら、彼女が裸で艷やかなテーブルに覆いかぶさり、乳房が圧迫されながらシンメトリーに相似形を作っている写真が好みです。デジタルでの撮影にはない、フィルム撮影の一期一会の迫力を感じます。
彼女の肉付きのよさや、女性の立場だったら忌避されるかも知れない弛緩した様子も、撮影者のヘルムート・ニュートンは容赦なく撮っています。撮り進むにつれて彼女の雰囲気も変わっていき、まるでスキャンダラスなドキュメンタリー写真のようにも見えます。
当時石田えりは33歳。撮影場所はニュートンが買い取って住んでいたモナコの古城です。ニュートンは、この厳かな上流階級の場所に、彼女の持つ日本人的な丸みのあるフォルムを配置するギャップも楽しんでいますね。
ニュートンはファッション誌『VOGUE』などで世界に知られるようになり、生と死やサドマゾなどをモチーフに美を通して階級社会を描いていました。1990年代には彼も70代になり仕事のペースも落ちていましたが、1993年に石田えりの写真集を撮ると聞いたときには「大御所だけど、まだ現役だったのか」と驚いたのを覚えています。