神奈川県のとある分譲マンション。管理組合の理事会でこんな提案が持ち上がった。「住民同士の交流を深めるために、定期的にイベントを開催したらどうか?」。候補に挙がったのは、飲み会、バーベキュー、カラオケからゴルフコンペまで……。だが、「わざわざ参加したくない住民も多いはず」との反対意見も出て紛糾。果たしてマンションコミュニティはどこまで必要なのか。住宅ジャーナリストの榊淳司氏がレポートする。
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口の悪い人は、マンションのことを「コンクリート長屋」と呼んだりする。同じ敷地の中にいくつもの住戸がある集合住宅ということなら、熊さん八っつぁんの時代の長屋と同じである。しかし、その暮らしぶりは大きく違う。
現代日本のマンションは、だいたいが鉄筋コンクリート造である。各住戸を隔てる鉄筋コンクリートの厚さは最低でも150mm、厚いところは200mmを超えたりもする。乾式壁を多用しているタワーマンションでもない限り、隣戸の生活音が漏れ聞こえることはない。
つまり、現代日本のマンションではのっぺらなタワータイプでない限りは多くの場合、各住戸のプライバシーは高度に守られていると言っていい。また、ご近所づきあいも不要である。隣にどんな人が住んでいるのか、知っている必要は何もない。また、大きな災害でも生じない限り、隣近所が助け合うようなことにもならない。
ただし、分譲マンションを購入した場合には、自動的に管理組合の一員となる。その義務はまず、定められた管理費や修繕積立金を支払うこと。管理規約やその他の細則を守ること。そして、総会などでは区分所有者の一人として議決に賛否を投じること。さらには、時には理事や理事長の役職を引き受け、その責務を果たすこと。
数千戸規模のマンションなら、一度も管理組合の理事などにならずに数十年を過ごすことができるかもしれない。しかし、数十戸規模なら何年かに一度、理事の順番が巡ってくる。それは義務なので、避けられないはずだ。