2017年度版の「『青少年の性行動』第8回調査報告」には驚きの結果が並んでいた。第1回の1974年からほぼ6年おきに全国の学生を対象に行われてきた“イマドキの性”を読み解く一大調査。今回は男女学生約1万3000人を対象に行われ、過去最大の調査規模になった。
デートやキス、初体験など若者の性行動が減少した最新結果を報告書はこうまとめる。
〈2017年調査では青少年の性行動の不活発化がさらに進行し、特に女子でその傾向が著しいことが明らかとなった〉
40年以上続く「青少年の性行動調査」は時代を映す鏡でもある。
1974年の調査では「はじめてキスをした場所」に「喫茶店」が登場し、「はじめて性交した場所」に「モーテル」という項目があった。
性愛の歴史に詳しい、同志社大学大学院社会学研究科教授の佐伯順子さんが指摘する。
「ヨーロッパでは現状、事実婚や親しくなったカップルが一緒に住む文化がありますが、日本では同棲までのハードルが高い。だからカップルが一緒に行く『デートスポット』が作られやすい。特に実家で暮らす都会の若者ほど家に恋人を呼びにくいため、喫茶店やモーテルといった“カップル御用達”の場所が発展しました」
1981年の調査では「性的興奮を感じたときはいつですか」との質問に「週刊誌の性的な写真や劇画を見たとき」との答えが多かった。
佐伯さんは、「性行動とメディアは密接に関係する」と指摘する。
「江戸時代には春画が視覚的な性情報として重宝されたし、昭和の時代にはポルノ映画や漫画、雑誌のグラビアなどで性の視覚情報を得て、性欲をかき立てて実際の性行動にいたるプロセスがありました。その後のバブル期にはトレンディードラマが恋愛ブームを後押しし、1997年には渡辺淳一さんの小説『失楽園』が刊行されて、そこで描写される激しい性愛が注目されるようになりました」
1990年代に入ると、ポケベルや携帯電話が若い世代にも普及。デート、キス、性交の経験率が男女とも全年代で急上昇している。
2000年代には『世界の中心で、愛をさけぶ』や『電車男』、『恋空』などのケータイ小説が流行、「純愛ブーム」が巻き起こった。
「近代以降の画一化した日本の性教育のなかで、『中高生が恋愛や性交をするなんてふしだらだ』という価値観が広まりました。それを一蹴したのが、純愛ブーム。『愛していれば体の関係もアリ』を合い言葉に恋愛と性愛の垣根が崩れ、若年層の性行動が活発化しました。恋人がいることがステータスで、未婚の若者が薬指に指輪をはめて、『結婚していないけどステディーがいる』とアピールすることも流行しました」(佐伯さん)