現在、猫の飼育頭数は952万6000頭(一般社団法人ペットフード協会調べ)。犬の飼育頭数を上回り、猫ブームが起きている。そんな中、飼い主なら誰もが一度は苦労する「猫を病院へ連れて行く方法」について、最近はこんな新しい動きが…。
かつて、猫の飼育方法といえば、家の外と中を自由に行き来できる“放し飼い”が主流だった。しかし今は室内で飼うのが一般的。「平成29年全国犬猫飼育実態調査」(一般社団法人ペットフード協会調べ)でも、飼育場所が室内のみという“完全室内飼い”の猫は74.9%にものぼった。東京都も、交通事故や感染症のリスク、近隣住民とのトラブルなどを防ぐため、猫は室内飼育を推奨している。
猫は犬ほどの運動量が必要なく、上下運動のできる環境があれば、室内でも飼育は可能なのだ。むしろ猫は、家の中を自分の縄張り=テリトリーと思うので、安心して過ごせるという。とはいえ、室内飼いの猫もどうしても外に出ないといけない時がある。それは動物病院へ行く時だ。
「キャリーバッグに入れようとすると暴れて嫌がりませんか? それは過去にキャリーバッグに入れられて怖い思いをした経験がトラウマになっているから。犬より猫の方が病院が苦手な子は多いです」
と、往診専門動物病院「わんにゃん保健室」院長の江本宏平さんは言う。猫は犬の鳴き声やにおいも苦手なので、最近では、犬と猫で待合室が別だったり、猫専門の動物病院も増えている。さらに前出の江本さんのように、獣医師が自宅に来る往診スタイルも登場した。
「往診の場合、利用者の約6割が猫です。猫は外に出るのを極端に嫌がるので、私たちがご自宅にうかがっています」(江本さん)
往診では診察後、その場で注射や薬を処方。ワクチン接種なども対応している(基本料金5,000円~、対応エリアは都内およびその近郊)。また、高齢猫や病末期などで、病院まで連れて行けない子の緩和ケアも行っている。
「本当に獣医療を必要としているのは、通院できずに寝たきりの子だったりします。往診だとそのような子たちにも手を差し伸べられると思い、往診専門の動物病院を開業しました」(江本さん)
さらに往診することでペットたちの生活環境を直接見られるのもメリットだという。
「高齢猫の場合、皿の位置が低いと前足に負担がかかってしまいます。“電話帳の上に置いてあげて”など生活環境がわかるからこその、的確な指示が出せます」(江本さん)