来年夏から実施される予定の選挙制度改革が7月に国会を通過した。だが、秋の自民総裁選へ向けて重要テーマだといわれながら、いまひとつ盛り上がりを欠いている。経営コンサルタントの大前研一氏が、大前流「選挙制度改革」私案を解説する。
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9月に予定されている自民党総裁選で、安倍晋三首相の3選が濃厚になっている。これでまた、安倍一強体制によるゴリ押し政治が続くことになりそうだが、先の国会で自民党が参議院議員の定数を6人増やし、比例区に「特定枠」を設ける改正公職選挙法をどさくさ紛れに成立させたのは、とんでもない暴挙であり、看過してはならない。
改正公選法の内容は【1】選挙区では「1票の格差」を是正するため、埼玉選挙区の定数を2増やす【2】比例区では定数を4増やして96から100にした上で、個人の得票数に関係なく優先的に当選できる特定枠を政党の判断で採用できるようにする──というものだ。
自民党の狙いは「島根・鳥取」「徳島・高知」を一つの選挙区にする「合区」によって選挙区から擁立できなくなる現職議員を特定枠で救済することにあり、改正公選法は来年夏の参議院選挙から適用される。参議院の定数増は1970年以来48年ぶりだが、前回は本土に復帰する沖縄に地方区を設けるためのものであり、自民党の「党利党略」で定数を増やすというのは前代未聞のことである。
ところが、安倍首相に反旗を翻して総裁選に出馬する予定の石破茂元幹事長や、自民党の政策にしばしば異論を唱えている小泉進次郎筆頭副幹事長までもが衆議院本会議の改正公選法案採決で賛成票を投じた。こんな理念も節操もない国会議員たちに「真っ当な選挙制度改革をやれ」と言うのは、泥棒に「自分を縛る縄を綯え」と言うのと同じであり、端から無理なのだ。そもそも議院内閣制の議論で議員が投票して法律を決めるというのは、矛盾以外の何物でもないのである。