夏の間だけ、時計を早めるサマータイムを日本も導入する案が、この秋にも臨時国会で決まりそうな勢いとなっている。が、見逃せないのは、五輪組織委員会の森喜朗会長が強調してきた「サマータイムを導入すればマラソンを(現在の日本時間での)朝5時スタートにできる」という点に疑問の声があることだ。都庁関係者がいう。
「五輪大会の競技日程は、スタート時刻も含めてすでに決まっています。しかもその時刻はアメリカのテレビ放映時間を重視して決められている。米NBCなどテレビ局から支払われる放映権料は五輪収入の柱だから、その発言力は大きい。もしサマータイムを導入して日本の時計の針を2時間先に進めても、アメリカの放映時間がそのままならスタートは〈午前7時〉が〈午前9時〉に変わるだけで、実態は何も変わらないのではないか」
競技日程は7月18日に開かれたIOC理事会で決定されたばかり。アメリカでの放送時刻が2時間もズレることになる“追加調整”がそもそも可能なのか。この点について組織委員会戦略広報課に問うと、
「確かに、競技時間を変更するならば放映権をめぐってIOC、オリンピック放送機構(OBS)、国際競技団体(IF)などの了承が必要になります」
とした。ただ、重ねて「日本がサマータイムを導入しても、世界標準時上の競技日程の時刻は変わらず、マラソン競技は『9時スタート』になるのではないのかという指摘がある」ことをぶつけると、
「そういった指摘は関知しておりません」
という回答が送られてきただけで、その後は担当者と連絡がつかなくなった。“サマータイムを無理矢理導入したけれど、結局、酷暑のなかでマラソンが開催される”という悲劇が起きるリスクは本当にないのか、判然としない。