岐阜と東京を舞台に、失敗を恐れないヒロイン・鈴愛(永野芽郁)が七転び八起きしながら力強く生き抜く姿を描くNHK連続テレビ小説『半分、青い。』。先週の放送では、中村雅俊演じる鈴愛の祖父・仙吉が亡くなるシーンが放送され、視聴者の涙を誘った。週明け20日の放送では、仙吉がナレーションに再登場したことが大きな話題となった。注目を集め続ける祖父・仙吉について、コラムニストのペリー荻野さんが考察する。
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そんなわけで、『半分、青い。』では、ヒロイン鈴愛の祖父・仙吉(中村雅俊)が急逝。ひ孫とのんびり昼寝をしている最中の大往生だったが、やっぱり姿が見えないのはさびしい。突っ走ったり、コケたり、ぼんやりしたりする鈴愛をあのたれ目で温かく見つめ、時には「人間は、強い」などとしみじみした言葉で励ましてくれたお祖父ちゃん。戦前は楽器店に勤めていたという設定で、ギターを持ち出して歌っちゃうというのも新しかった。
思えば、仙吉の活躍には、ふたつの意味が見て取れる。ひとつは「中村雅俊お祖父ちゃん解禁!」ということ。中村雅俊といえば、70年代、『われら青春!』や『俺たちの旅』など日テレの青春ドラマの顔として活躍。刑事ドラマでは文学座の先輩・松田優作と共演した『俺たちの勲章』、大河ドラマでは『花神』で若き高杉晋作役で人気を博した。歌手としても『ふれあい』をヒットさせ、コンサートツアーも精力的にこなすなど、若々しさはずっと変わらない。これまで父親役では前田敦子が娘になった時代劇『あさきゆめみし』(NHK)などがあったが、この『半分、青い。』でついに本格的に祖父役で老けを表現してみせたのだった。
俳優の中には、年相応に役柄を変化させていくタイプと、永遠にイメージをキープし続けるタイプがある。後者の代表が田村正和や加山雄三で、中村雅俊もこちらだとばかり思っていたが、ここへきて、祖父役解禁。なんだかとても楽しそうに見えた。次にどんな「老け」で出てくるのか、注目である。
仙吉人気のもうひとつの意味は、朝ドラで新タイプの祖父役ブレイクの例を作ったということだ。朝ドラでは、ヒロインの相手役がブレイクするのは恒例になってきたが、もうひとつ、「お父さん役俳優がブレイクする」という現象がしばしば起きた。70年代では『雲のじゅうたん』の中条静夫(後にドラマ『あぶない刑事』シリーズの課長役でも人気に)、80年代では『はね駒』の小林稔侍、90年代には『ふたりっ子』の段田安則もいる。
一方、近年は、祖父役も少しずつ存在感が大きくなってきた。『あまちゃん』の祖父忠兵衛(蟹江敬三)は遠洋漁業の現役漁師だったし、『花子とアン』の石橋蓮司は、役名が『赤毛のアン』でアンを育てたマシューにちなんで周造で、口数が少ないキャラもよく似ていた。