レトルト食品の進化には目を見張るものがあるが、その代表格といえばカレー。民間調査会社の推計では、昨年、レトルトカレーの市場規模はついにカレールーを逆転した。いまやレトルトカレーは食品メーカーの商品から、ご当地食材を使った“変わり種カレー”まで数えきれないほどあるが、いま注目されているのが有名ホテル監修のレトルトカレーだ。ホテル評論家の瀧澤信秋氏が、その魅力を紹介する。
* * *
昨今ホテルオリジナルのレトルトカレーが注目されている。そもそもホテルとカレーは親和性が高い。オリジナルのレシピを守り続ける伝統的なホテルは多く、“あのホテルのあのカレー”を目当てにホテルを訪れるゲストもいる。
伝統あるホテルということでいえば、やはりラグジュアリーホテルが想起される。
「パレスホテル東京」で発売されているレトルトカレー「パレスホテル オリジナルカレー」は注目だ。1977年より2009年までランチタイムのみ営業していたカレー専門店「IVY House」(アイビーハウス)へはその味を求め、オフィスワーカーをはじめ多くのファンがパレスホテル東京を訪れた。そのような伝統の味を継承したレトルトカレーゆえ、思い出とカレーの味わいが融合するかのような一品。懐かしさこみあげる方も多いのではないだろうか。
オリジナルレシピと伝統でいえば、クラシックホテルのレトルトカレーも逸品揃いだ。
横浜の「ホテルニューグランド」は、多くの伝統あるオリジナルグルメでも知られるところだが、カレーもそのひとつ。ホテルの名物カレーが家庭で楽しめると買い求めるファンが多い。
一方、1935年(昭和10年)創業のクラシックホテル「雲仙観光ホテル」(長崎)の“伝統のビーフカレー”もオススメの逸品。伝統のレシピをレトルトカレーで再現しているが、レトルトと侮ることなかれ。この芳醇なコクはまるでビンテージワインのようにホテルの歴史をも想起させる深い味わいだ。
新興のホテルブランドでは個性的なレトルトカレーが人気を博している。
全国各地でホテルを展開する「アゴーラ・ホテルアライアンス」で大人気のカレーが「アゴーラ ホテル黒カレー」。総料理長のひとりである浦野敏一氏の監修により、スパイスと香味野菜をじっくり、まろやかな味わいを保った逸品が生み出された。カレー=ブラウンという先入観を裏切る“ブラック”が印象的。精魂込めたフォンド・ヴォーと厳選した様々なスパイスで食欲をそそるカレー。こちらもレトルトで楽しめる。