映画史・時代劇研究家の春日太一氏による週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、俳優・秋野太作が密かな自信作『おもいっきり探偵団 覇亜怒組』での怪人・摩天郎役と、俳優の世界で大事なことについて語った言葉を紹介する。
* * *
秋野太作は一九七六年『俺たちの朝』(日本テレビ)に出演した際にその時の役名からとって、それまでの本名「津坂匡章」を現在の芸名に変更している。
「親父がいろいろ担ぐ人でね。この名前だと交通事故で死ぬと誰かに言われたんだ。実際にそれまで二回死にかけていたからね。それで『三回目には死ぬ』と言われた親父が凄く心配して、変えることにしたんだ。
戦後ずっと父子家庭で育ってきて、二度目の母親が来て僕は家を出たわけだけど、親父とは精神的に仲がよかった。その親父にそんなこと言われちゃあ──と思ったんだよね。
それに家族を持って、子供も生まれて、人生の転換期でもあったからね。このまま遮二無二働いていてもしょうがないと思って、精神的にも内側に向かっている時期だったんだ。それで、これまでの人生をまたやり直そうという気はあった。それと親父の言葉がシンクロしたんだ。
でも、バカなことをしたと思いますよ。やんなくてもいいことをやったんだ」
八七年の特撮ドラマ『おもいっきり探偵団 覇亜怒組』(フジテレビ)では主人公の少年たちの担任教師と、彼らに立ちはだかる怪人・摩天郎を演じた。