美味さの追求のみならずユーザーの健康にいかに寄与するか、が食品メーカーの至上命題になりつつある。いわゆるインスタント食品の市場とて例外ではない。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏がレポートする。
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「糖質オフ」対応のカップ麺がコンビニの棚で存在感を増している。
存在感が明確に可視化されるようになったきっかけはなんと言っても日清食品の「カップヌードルナイス」シリーズだろう。2017年4月に「レタス約4個分相当」の食物繊維を練り込み、「脂質50%OFF」「糖質40%OFF」を掲げ、178kcalという低カロリーを実現。2500万食を売り上げ、今年のリニューアルでは176kcalとさらにカロリーを削り込んだ。
「カップヌードルナイス」は糖質の数字自体は大々的に喧伝していないが、従来品の「しょうゆ」に当たる「ポークしょうゆ」の糖質は18.8g(※)。一般的な糖質制限では一食あたりの糖質を10~20gに抑えることが推奨されていて、この範疇内に収まっている。
【※従来品は「炭水化物」表示のみで、そこに含まれる「糖質」単体での成分表示はないが、「40%OFF」だとすると従来品の糖質は31.3g前後だと推定される】
そもそもカップ麺市場に「低糖質麺」を持ち込んだのは、「チャルメラ」などの定番ブランドを持つ明星食品だ。2015年5月に「明星 低糖質麺 はじめ屋 糖質50%オフ 醤油豚骨味」(長い!)というカップ麺で市場を開拓した。
その2015年秋には早くも同商品をリニューアルし、新アイテムのタテ型「明星 低糖質麺 ローカーボNoodles」も投入。翌年の2016年3月には両ラインナップともリニューアルし、さらに翌年2017年2月には初の焼きそばタイプの「明星 低糖質麺 はじめ屋 こってりソース焼そば」を投入し、その後もリニューアルをかけている。商品発売後も、半年~1年に一度リニューアルをかけ続ける大リニューアル祭り状態なのだ。
実は明星に続いて低糖質カップ麺市場に乗り込んだのはエースコックだった。日清に先んじること1か月、糖質を50%抑えた即席カップ麺「麺ごこち 糖質50%オフ 芳醇鶏だし醤油ラーメン」を投入し、ご多分に漏れず同年9月にリニューアル発売を行っている。
低糖質カップ麺には象徴的な共通項がいくつかある。そのひとつ全ブランドに共通する「短期でのリニューアル新発売」だ。いずれのアイテムも発売から半年から1年以内にリニューアルをかけ、その後もリニューアルを繰り返す。その最大の理由は食味にある。
言うまでもなく「カップ麺」の生命線は麺の食感と味わいこそが商品の生命線だが、各メーカーともここに苦心惨憺の跡が伺える。現在の糖質カット麺の主流は麺に食物繊維を加え、全体の糖質量を下げるパターンが多い。いわゆる「糖質」とは「炭水化物」から「食物繊維」を除いたものを指し、実際に成分表を見ても従来品とは段違いに食物繊維の量が多い。
これまで小麦粉を中心に「味」「コシ」「伸び」に注意を払ってきたメーカーが、「糖質オフ≒食物繊維」という要素を盛り込んだ麺を開発しなければならなくなったのだ。糖質オフはトレンドではあるが、いつまでこのトレンドが続くか不透明な部分もある。となれば急ピッチで開発を進め、できる限り早くリリースし、ユーザーの求めに応じてアップデートを繰り返す。つまりスマホ当のアプリ開発におけるベータ版でのリリースのような展開も視野に入ってくるわけだ。