約30年前、検察に「わが国の犯罪史上においても、稀にみる重大かつ凶悪な犯罪」と言わしめた日本中を震撼させた「東京・綾瀬女子高生コンクリート詰め殺人事件」。
事件発生は1988年11月25日午後8時半頃。アルバイト先から埼玉県三郷市の自宅へと帰宅途中だった女子高生(当時17才)が突然、拉致された。
犯行グループの主犯格の少年A(当時18才)は、中学の後輩のB(当時17才)とC(当時15才)、D(当時16才)と共に、たまり場だった東京都足立区綾瀬の住居2階に少女を連れ込んだ。この家はCが両親と同居する自宅だった。
以降、少女は約40日間の監禁生活で、筆舌に尽くしがたい残虐行為の数々を受けることになる。
逮捕後、犯行グループ4人は法廷で涙を見せた。裁判の結果、少年たちを更生させようと、Aが懲役20年、Bが懲役5年以上10年以下、Cが懲役5年以上9年以下、Dが懲役5年以上7年以下で量刑が確定した。
しかし、彼らが健全な社会復帰をすることはなかった。かつての少年たちは、出所後4人中3人が再び罪を犯したのだ。最近でもここでいうCこと湊伸治(45才)が32才の男性を刃渡り8cmの折り畳み式ナイフで刺したなどとして、殺人未遂容疑で逮捕された。
◆犯罪者の社会復帰が難しい時代
『犯罪白書』(平成28年版)によれば、出所から5年以内に刑務所に戻る確率は、覚せい剤49.4%、窃盗45.7%、傷害・暴行36.1%に達する。強姦・強制わいせつ(24.1%)や殺人(10.3%)という凶悪犯罪でも、1~2割は刑務所に戻ってくるのだ。
臨床心理学者の矢幡洋さんは、「日本の刑務所は矯正指導のアプローチに課題がある」と指摘する。
「日本の更生プログラムは、『幼少期の環境に犯罪の原因があった』として、誰か母親役を立てて母子関係の再構築を目指すというような、『心を入れ替えれば再犯しない』という精神重視的な考え方が大きい。
一定の効果はありますが、『私は親に愛されなかったので犯罪に走った』と犯罪の正当化にもつながります。アメリカでは、『カッとなったら10数える』『怒りを自己採点する』など、より実践的なアプローチを教えます。心ではなく、誰かに危害を加えたくなった際の具体的な改善策を教えるので、成果がわかりやすい。再犯防止には、こうしたアプローチの方が適していると思います」
犯罪者は刑務所という社会から隔離された場所から、出所後いきなり一般社会に戻されることになる。“こういう場合はこうする”という実践法を身につけないと、社会復帰の際に苦労する。