「吉田が準優勝投手になるまでに成長したのは、正村監督の指導が大きかった。吉田を紹介した嶋崎氏や金足農の中泉一豊・現監督は、正村監督への御恩を無下にできないため、進路変更してプロ志望届を提出するのは避けたいはずです。そうしたアマ指導者たちの繋がりは、時に“ムラ社会”の掟のように機能することもある」(前出・担当記者)
問題は、当事者以上に、両校の関係者たちが“進路を変えてもらっては困る”と思っていることだ。
「金足農業は、これを機に八戸学院との進学ルートを築きたいし、八戸学院大は、スターが入学すれば大学としての知名度は桁外れに高くなる。1985年、早稲田大進学を表明していたPL学園の桑田氏がドラフト1位で巨人に入団して以来、PL出身選手の早大進学ルートは断たれた。もはや吉田の進学は、学校同士の問題にもなっている」(同前)
さらに厄介なのは、秋田県高野連の事情までかかわってくることだ。
「秋田では2015年に夏の甲子園ベスト8入りを果たした秋田商業のエース・成田翔(かける)が、社会人志望を表明しながら甲子園後にプロ志望に転向したことがあった(ドラフト3位でロッテに入団)。この時もすでに入団確実と見られていた地元の社会人チームに迷惑がかかった。事なかれ主義の秋田県高野連としては、県内で再びそのような突然の進路変更が起きては困ると心配しているようです」(同前)