あらゆる業界でAI(人工知能)を駆使した技術革新が目覚ましいが、気になるのは、AIをいとも簡単に利用できるかのようなイメージを与えている点だ。しかし、AIはタダではなくお金がかかる。「資金力によって“AI格差”も生まれてきます」と指摘するのは、アップル元社員でITジャーナリストの竹内一正氏だ。同氏が近著『物語でわかるAI時代の仕事図鑑』(宝島社)の内容を紹介しながら、AI社会と働き方の未来シナリオを予測する。
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お金のない大学生が立ち上げたフェイスブックが大成功したのは、タダ同然で使えるインターネットという“孵化器”があったからだ。ツイッターにしても同様である。
しかし、AIはタダでは使えない。そのうえ、AIに入力する膨大なデータを集めるには金がかかる。データ量が多ければ多いほどAIは力を発揮するが、より多くのデータを集めるには、より多くの金が必要になる。
そして、AIを駆動するには高性能なコンピューティング能力が欠かせない。これもまた金がかかる。
「インターネットは貧乏人のツールだったが、AIは金持ちのツールだ」──つまり、AIが使える金持ちは、AIを駆使してより金持ちになるが、AIに手が届かない貧乏人はより貧乏になる。これがAI時代の真相だ。
そして、AIは単独でいきなり私たちの前にポンと出現するわけではない。社会の受け入れる力と綱引きをしながら浸透していく。利用する立場の企業経営者の都合もあるし、その中にはAIを導入すればすべての問題が解決できると過大評価して先走る社長もいる。
一方の従業員たちは、仕事を奪われると考えればしたたかにAI化に抵抗する。
この度上梓した『物語でわかるAI時代の仕事図鑑』は、多くの企業にAIが進出した2030年の日本を舞台にした未来小説になっている。登場する6人の職業人たちは高齢化、非正規雇用が増加した社会で、時にAIを利用し、時にはAIに振り回されながら、家族を支え懸命に生きようとドラマが展開していく──。