地域医療に長く取り組んできた諏訪中央病院名誉院長の鎌田實医師は、チェルノブイリの子供たちへの支援など、海外での医療支援にも積極的に取り組んでいる。ほぼ1年ぶりに訪れることができたイラクの診療所で出会ったのは、まとめ役をしているバッサーム医師だ。彼がなぜ「愛の人」と呼ばれているのか、鎌田医師が伝える。
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イラクの難民キャンプは、気温42度。熱風がかたまりになって吹いていた。
再三、入国申請したが、イラク国内の混乱でビザが下りなかった。ほぼ一年ぶりに入国が叶ったが、過酷な暑さが体力を奪っていく。
キャンプ生活を余儀なくされている人たちの健康を守るため、ザイトゥーンPHC(プライマリ・ヘルス・ケア)診療所を訪ねた。ぼくが代表をしているJCF(日本チェルノブイリ連帯基金)がかかわって出来た診療所だ。
まずは、健康になるための情報を知ってもらいたい。モスルで小児科医をしており、現在は信州大学で小児白血病の遺伝子解析をしているリカア先生とともに、減塩を心がけること、野菜を多く摂ること、運動の大切さについて話した。全員でスクワットやかかと落としをやってみると、緊張がほぐれ、みんなから笑顔が出てきた。
今回は、長野県と埼玉県から看護師2人が同行し、体脂肪率を測定できる体重計で測定したり、肥満度の目安になるBMIを計算して数字を示した。これが意外に好評だった。体脂肪率から推定される健康年齢が出ると、ワッと笑い声が上がる。98kgの女性が、初めて自分の体重とBMIを知り、自分が太っていることを認識した。思わず笑ってしまったが、健康づくりのスタートは、現実を認識することから始まるのだ。