2リットルのペットボトルのお茶と紙コップ、お菓子を丁寧に抱えて、小柄な女性が早足に歩いてきた。衆議院議員やその家族が暮らす宿舎(東京・赤坂)の1階ロビー。8月下旬の平日の昼下がり、静かな大理石のフロアに足音だけが響く。
「お待たせいたしました。本日はよろしくお願いします」
約束の時間の30分前。汗を拭きながらインタビュー会場の準備をしていたところで本誌記者を見つけ、そう深々とお辞儀した女性――それが石破佳子さん(62才)だった。
次の総理の椅子をうかがおうという石破茂衆議院議員(61才)の妻である。いわば、“大物政治家の妻”だ。多くの秘書を引き連れて…と記者は想像していたが、まったく違った。1人で現れて、記者にお茶とお菓子を勧め、屈託ない笑顔で話す。
「あれ、1人ではダメでしたか? みなさん、こういう時は秘書さんもご一緒なんでしょうか? すみません、私、全然わかってないんですよ(笑い)」(佳子さん、以下「」内、同)
ほとんどメディアに登場しない「ファーストレディー候補」が、夫婦の“決戦”直前、本誌に胸の内を語った──。
◆夫はキャンディーズのシングルは全部歌えます
9月7日に告示を迎え、「自民党総裁選」の火ぶたが切られた(9月20日投開票)。立候補した石破氏と、現職の安倍晋三首相(63才)の一騎打ち。勝者が自民党総裁、つまり次の総理大臣となる。
下馬評では安倍首相の優勢だが、地方の支持が厚い石破氏の大逆転もあり得る状況だ。石破氏の地元は鳥取県。防衛相や党幹事長などを歴任した当選11回のベテランで、特に「地方創生」に力を入れている。そんな石破氏を最も近くで支えるのが佳子さんだ。
「選挙中も、夫は他の候補者の応援で全国を回ることが多く、地元にはあまり帰れません。だから、私が1人で地元の選挙活動をするイメージが強いようです。“石破を尻に敷く強い妻”なんて言われることもありますが、全然そんなことないんですよ」
たしかに、小柄で華奢、飾らず控えめな口調からは、“恐妻”ぶりは感じられない。ただ、地元支持者の間では「石破さんが選挙に強いのは、半分以上が奥さんのおかげ」といわれるほどの人気者だ。
石破氏はバラエティー番組などへの出演も多いため、国民の知名度も高い。国会では「強面の理論家」だが、最近は「アイドルオタク」「鉄道オタク」としても知られる。