9月1日夜9時、東京・初台の新国立劇場。1時間30分休憩なしの会話劇を昼夜2公演こなした大竹しのぶ(61才)は、上演終了からわずか30分で、舞台化粧を落として私服に着替え、足早に楽屋口から駐車場へと向かっていた。用意された車にサッと乗り込むと、まっすぐ自宅へ向かう。しかし、まだ気を抜くことはできない。
還暦を超えてなお女優として第一線で活躍する彼女を自宅で待つのは、年老いた母親の壮絶な介護である──。
約10年前に建てられた、都内の高級住宅地にある地下1階・地上2階の豪邸。大竹は今、長男の二千翔さん(33才)、長女でタレントのIMALU(28才)と共に、母・江すてるさん(96才)の介護をする日々を送っている。朝日新聞夕刊で連載中のエッセイ『まあいいか』では、母の介護の模様をこう綴った。
《母の今日の食事量をチェックし、とにかく口から摂取してもらうためにはどうするか。娘が買ってきてくれたチーズケーキも、今日は食べてくれたみたいだ。よかった。洗濯も終え、今日も一日が終わり、少々疲れた身体でベッドに沈み込んだのが夜の1時》(8月10日付)
年間3本の舞台に地方公演もこなし、レギュラー出演中の『中居正広の金曜日のスマイルたちへ』(TBS系)のほかにラジオや新聞連載コラムを抱え、映画やドラマロケのスケジュールもびっしり詰まっている大竹。息つく暇もないほどの激務に、最近急激に体調が悪化した母の介護が重なっている。
「江すてるさん、最近は固形の食事が難しくなっているようです。大竹さんは仕事の前後の早朝や深夜に、やわらかいお粥や小さくきざんだ野菜のスープを手作りしているそう。足腰も弱くなってしまって、自力では立てないので、車いすに乗せたり、トイレの介助もあったりと、介護の負担は確実に大きくなっています。お母さんが心配でプライベートの外出も控えがちになっているそうで、よく通っていた寿司店にも最近は行っていないようですよ」(大竹の知人)
◆「もう、さよならかしら」と弱音を吐くことも
介護が始まったのは、2014年の夏。当時91才の江すてるさんは、夜中に玄関の段差につまずいて転倒。肩の骨折がきっかけだった。
「日中は大竹さんもお子さんも仕事がありますから、体が不自由になったお母さんを自宅で1人にするのは不安だったので、入院してもらおうとしたそうです。でも骨折が理由では、入院先が見つからない。それで、大竹さんときょうだいが自宅で順番に介護をする生活が始まった。けがで体が不自由になり、大好きな家事がままならなくなった江すてるさんはみるみる元気がなくなって、ふさぎ込むようになっていきました」(前出・大竹の知人)
「何の役にも立たずごめんなさい」「申し訳ない」──江すてるさんは何度もそう繰り返すようになったという。