多少のジャンルが違えど私や有働さんが働いているマスコミ業界は、残念ながら、外から見えるほどリベラルなところではない。表面ではそう見せていたとしても、たいていの人が自分の身の回りだけは別の物差しを用意している。そういうところで仕事を頑張っていると、知らない間に楽な対処法が身についてしまうのだ。かつて顔を引きつらせていた女の子も、都合よく自虐的な中年女の仮面をかぶるようになる。
先ほど、有働さんと5歳年上の私を「同世代といったら失礼かもしれないが」と書こうとした。これも中年女の自虐である。とにもかくにも若い方に価値があるという発想を、柔軟に受け入れている余裕を見せようと見栄を張った。「同世代といったら正確ではないが」と書くべきである。
そう、同世代といったら正確ではないけれど、有働さんや私たちの世代が、こうした自虐をやめない限り、無邪気な(これ、嫌味ですからね)おじさんたちの意識は変わらない。おじさんと書いたけれど、必ずしも性別が男性とは限らない。似たような思考を持った女性も含めての「おじさん」である。
注目度の高いニュース番組のメインキャスターを務めようとする人が、同じ仕事をするプロフェッショナルたちを前に「置屋の女将」なんていうのは、やっぱりダメだと思う。職業に序列はない。でも種類はある。お酒のお酌をしたり性的な空気を醸し出すことのプロと、ニュースを伝えるプロは違う。
私たちの世代が仕方なく受け流していった空気が、やっと今、変わろうとしている。女性一人一人の大きな、あるいは小さな勇気が塊となって、世の中の価値観を覆そうとしている時期だ。有働さんには、そういう空気を1ミリも漏らさずに伝えてほしいと期待している。