作家の甘糟りり子氏が、現代の「ハラスメント社会」について考察する。今回は、『NEWS ZERO』(日本テレビ系)のメインキャスターを務めることになった有働由美子アナの発言について。
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「若いアナ、キラキラした人たちと置屋の女将みたいな感じですが…」
10月からメインキャスターを務めるニュース番組の製作会見で、有働由美子さんは共演する日本テレビの若いアナウンサーと自分を比べてそう語ったという。そのニュースを読んだ時、なんというか冷たくて柔らかいもので頬を叩かれた気がした。あぁ…、と思った。
ダメでしょ、これは。でも、わかる、わかりますよ、その気持ち。
女性の価値は「若さ」と「美しさ」だとなんの疑いもなく思い込んでいる男性への楽な対処法は、わかりやすく「中年女の自虐」を差し出すことだ。そういうばかばかしい価値観を理解している心の広さ、自分はその対象ではないと自覚している謙虚さ、その二つを演じることでその場をやり過ごせるわけ。
私にも数え切れないほど覚えがある。だってめんどうくさいから。こっちだってそんなばかばかしい価値観にエネルギーを使って抗うほど暇ではない。だからその場限りの自虐でお茶を濁す。そのお茶の濁し方が雑であればあるほど「もののわかったいい女」扱いしてくる人だっているぐらいなのだ。
有働由美子さんは49歳、私はその5歳上だから同世代とはいい切れないが、見てきた景色はだいたい同じようなものだろう。若い頃は、ただ若い女の子というだけで無意味にちやほやされ、当たり前のようにお酒のお酌を強要され、セクシュアルハラスメントなどという言葉も概念もなかった。
飲み会はもちろん職場でも、ちょっとしたボディタッチで文句をいえる空気など微塵もなく、男性の中にはコミュニケーションの一つ、ぐらいにとらえている人もいた。そんな世の中で社会人になり、仕事を続けているうちに若い女の子ではなくなった。