省庁再々編の議論が盛んになりそうな気配だ。経営コンサルタントの大前研一氏が、前回の省庁再編で最大の誤りだったとという「厚生労働省の再々編構想」を解説する。
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2001年の「橋本行革」による1府12省庁の中央省庁再編を検証している自民党行政改革推進本部は、厚生労働省の分割を念頭に置いた中央省庁再々編の安倍晋三首相への提言を、9月上旬に取りまとめるという。その一方で、石破茂元幹事長は、「防災省」の創設を主張しており、自民党総裁選の争点の一つになるとも言われているが、中央省庁再々編はそういう次元の問題ではない。
私は内閣府、厚労省、総務省、国土交通省などを創設した橋本行革を当時、「見せかけの行革」「看板の掛け替え」「単なる引っ越し」と批判した。つまり、省庁を適当にくっつけ、運送会社が霞が関の中で事務機器や書類などの荷物を右から左へ移動させただけで、捨てたものは何もないのである。したがって、橋本行革は大間違いであり、議論するまでもなく、全面的に再吟味すべきだと思うのだ。
橋本行革の間違いの最たるものは、やはり厚労省だ。これは論外だと思う。私が知る限り、どこの国にも「厚生+労働」という括りの役所はない。
厚労省の厚生部門には「医政局」「医薬・生活衛生局」「健康局」「子ども家庭局」「社会・援護局」「老健局」があり、医療の普及・向上、麻薬・覚醒剤対策、社会福祉の推進、高齢者介護施策などを担っている。
一方、労働部門には「労働基準局」「職業安定局」「雇用環境・均等局」があり、労働条件の改善、雇用対策、非正規雇用労働者の待遇改善などを担当している。