映画『ロボコップ』のように、犯罪者を瞬時に見つけ出す「顔認証サングラス」をかけた警官。無人スーパーに自動運転バス。いま中国では、タブーなき実験が次々に進められている。新たな世界を創るのか、それとも危険な暴走に終わるのか。大前研一氏が解説する。
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中国は、政治的には北京中心の全体主義国家である。だが、経済的には地方や地域や都市ごとのバラエティが非常に豊かで、画一的に「これが中国だ」とは全く言えない。21世紀の新しい中国と20世紀の古い中国が混在し、いわば「United States of America」に近い、地方自治が進んだ「United States of China」になっているのだ。
新しい中国の代表的な例は、広東省の深セン、北京の中関村、浙江省の杭州などである。なかでも、先頭を走っているのが深センだ。1980年にトウ小平の「改革開放政策」を担う最初の経済特区の一つに指定された時は人口30万人の漁業を中心とする“寒村”にすぎなかった。それが加速度的に発展して今や「中国のシリコンバレー」と呼ばれる人口1400万人の巨大な知識集約型IT都市になっている。
当初は香港と隣接(電車で約40分)していながら中国本土の安価な労働力を利用できるため、主に香港企業が労働集約型の組み立て工場を展開しているだけだった。今でこそ香港最大の企業集団となった長江グループを率いる李嘉誠氏も、かつてはここで香港フラワー(ビニール製やプラスチック製の安っぽい造花)を作っていた。