大相撲秋場所の最大の焦点は日本人横綱・稀勢の里の「進退」となった。メディアはこぞって稀勢の里の夏巡業中の“好成績”を報じ、巡業後の出稽古でも玉鷲(小結)や阿武咲(前頭6)との三番稽古で大きく勝ち越すと、同じ二所ノ関一門の尾車親方(元大関・琴風)が「5月、7月より(状態は)全然いい」などと話し、復調ぶりが強調されてきた。
だが、実態は全く違った。
「番付が低い力士はどうしても稽古で横綱に気を遣うところがある。実際、大関クラスが相手になると稀勢はボロボロ。一門の連合稽古では、出稽古にやってきた大関・豪栄道を相手に尻もちをつかされたり、転がされたりして砂だらけになっていた。そういう時は、親方たちもコメントしようとしない。連合稽古を見に来た北の富士さんは“見てはいけないものを見てしまった”とつぶやいて帰って行きましたよ。夏巡業での稽古の量と質が不足していたことを露呈した」(協会関係者)
ただ、本調子にはほど遠くても、歴代ワーストとなる8場所連続休場中である以上、進退を懸けて土俵に臨むしかない。そうしたなかで注目が集まるのは、先月の秋田巡業中に倒れて緊急搬送された貴乃花親方の言動である。
「順調に回復していると聞くが、稀勢の里の問題には口を噤む状況が続いている。7月の名古屋場所前は、稀勢の里が果たすべき責任について問われ、『そこは難しいところですよね。本人にしかわかりませんから』と言葉を濁していた。ただ、心中では相当、思うところがあるはず」(担当記者)