大相撲秋場所の最大の焦点は日本人横綱・稀勢の里の進退である。歴代ワーストなる8場所連続休場からの土俵がどうなるか。事態を混沌とさせるのは、協会の執行部サイドの関係者から、「秋場所で負け越しても現役続行でいい」という声が出始めていることだ。相撲担当記者が語る。
「『大相撲中継』(9月号)の連載コラムで、北の富士さんが稀勢の里について〈たとえ負け越しても最後までとって、そこで考えればいい。過去にも15日間皆勤して、負け越した横綱もいることだし、それが即、引退とはならなかった〉と書いている」
たしかに、過去に15日間皆勤して、7勝8敗に終わった横綱が引退しなかったケースが2例ある。1989年秋場所の大乃国(現・芝田山親方)、1999年秋場所の若乃花(3代目)だ。ともに7勝7敗で迎えた千秋楽に黒星を喫している。
「とはいえ、どちらのケースも本人が20代でまだ先があった。32歳で、8場所も続けて休場した後の稀勢の里と同列には論じられないはず。それなのに、北の富士さんのコラムも同様、協会執行部の中からも、“千秋楽で星を落としての7勝8敗なら、翌日の横審で慰留する”というシナリオが囁かれ始めている。同じ一門の尾車親方らがすでに根回ししているといいます」(ベテラン記者)
ただ、いずれにせよ「途中休場なら引退やむなし」という線は変わらない。