ライフ

【川本三郎氏書評】視力を失った作家に聞こえる文学作品の音

『世界でただ一つの読書』/三宮麻由子・著

【書評】『世界でただ一つの読書』/三宮麻由子・著/集英社文庫/640円+税

【評者】川本三郎(評論家)

 文学作品のなかにはこんなにも多様な音が表現されていたか。まったく気づかなかった。

 著者は四歳の時に視力を失った。自身の言葉で言えば「シーンレス」。だから音に敏感になる。漱石の「坊っちゃん」は音にあふれた小説だという指摘がまず新鮮。汽船が港に着いた時の音。宿屋の騒々しい笑い声。生徒たちの大声。さらには蚊の飛ぶ音。赴任地になじまなかった主人公の違和感が音で表現される。

 騒音のなかには東京で聞いた懐しい音もある。三味線や太鼓の音。坊っちゃんが最後に東京に戻るのはこの懐しい音に導かれたからだという。これまで誰も言わなかったことではないか。吉本ばななの「TSUGUMI」は海の小説だとしたあと、海の音は太平洋、日本海など海域によって違うと言う。これにも驚く。

 小川洋子「博士の愛した数式」、池澤夏樹「南の島のティオ」など現代の小説だけではない。「アラビアンナイト」や「モンテーニュ旅日記」、スウェン・ヘディンの「さまよえる湖」まで論じる。「アラビアンナイト」は約十年かけて点字で読了したという。何より面白かったから。どこがか。御馳走の描写が豊かだし、音楽の調べが聴こえてくるから。

関連記事

トピックス

岡田結実
《女優・岡田結実(24)結婚発表》結婚相手は高身長の一般男性 変装なしの“ペアルックデート”で見せていた笑顔
NEWSポストセブン
ウッチャンナンチャンがMCを務める番組『チャンハウス』
【スクープ】フジテレビがウンナン&出川MCのバラエティー番組で小学生発言を“ねつ造演出”疑惑 フジは「発言意図を誤解して編集」と説明、謝罪 
女性セブン
同区在住で農業を営む古橋昭彦容疑者は現行犯逮捕された
《浜松高齢ドライバー事故》「昭坊はエースピッチャーで自治会長をやっていた」小学生の列に突っ込んだ古橋昭彦容疑者(78)の人柄【小学2年生の女児が死亡】
NEWSポストセブン
くら寿司
《ピンク色の破れたゴムを…》「くら寿司」が迷惑行為に声明「厳正な対応を行う予定」実行者は謝罪連絡入れるも…吐露していた“後悔の言葉”
NEWSポストセブン
中学時代の江口容疑者と、現場となった自宅
「ガチ恋だったのかな」女子高生死体遺棄の江口真先容疑者(21) 知人が語る“陰キャだった少年時代”「昔からゲーマー。国民的アニメのカードゲームにハマってた」【愛知・一宮市】
NEWSポストセブン
巨人戦で審判の判定に抗議する中日・星野仙一監督(1999年、時事通信フォト)
“ジャンパイア”疑惑で考えるマスの傲慢 「球界の盟主・巨人」をどこまで特別扱いするかは「人類社会に共通する普遍的テーマ」である【中日ドラゴンズに学ぶ人生の教訓】
NEWSポストセブン
すき家がネズミ混入を認め全店閉店へ(左・時事通信フォト、右・HPより 写真は当該の店舗ではありません)
【こんなに汚かったのか…】全店閉店中の「すき家」現役クルーが証言「ネズミ混入で売上4割減」 各店舗に“緊急告知”した内容
NEWSポストセブン
動物言語学者・鈴木俊貴氏(左)と小説家の川上弘美氏が動物言語について語り合う
【対談】『僕には鳥の言葉がわかる』著者・鈴木俊貴氏と自らの小説に“鳥の言葉”を登場させた川上弘美氏が語り合う「動物言語が切り拓く未来の可能性」
週刊ポスト
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
X子さんフジ退社後に「ひと段落ついた感じかな」…調査報告書から見えた中居正広氏の態度《見舞金の贈与税を心配、メッセージを「見たら削除して」と要請》
NEWSポストセブン
ロコ・ソラーレが関東で初めてファンミーティングを開催(Instagramより)
《新メンバーの名前なし》ロコ・ソラーレ4人、初の関東ファンミーティング開催に自身も参加する代表理事・本橋麻里の「思惑」 チケットは5分で完売
NEWSポストセブン
中居氏による性暴力でフジテレビの企業体質も問われることになった(右・時事通信)
《先輩女性アナ・F氏に同情の声》「名誉回復してあげないと可哀想ではない?」アナウンス室部長として奔走“一管理職の職責を超える”心労も
NEWSポストセブン
大手寿司チェーン「くら寿司」で迷惑行為となる画像がXで拡散された(時事通信フォト)
《善悪わからんくなる》「くら寿司」で“避妊具が皿の戻し口に…”の迷惑行為、Xで拡散 くら寿司広報担当は「対応を検討中」
NEWSポストセブン