「この香りを嗅ぐと、あの時のことを思い出す…」そんな経験はないだろうか? 香る単語帳『FLAROMA』は香りと記憶の関係に注目した大学生のアイディアがもとになった文具。埼玉県内の学生と企業が手を結び、これまでにない新商品が誕生した。
『FLAROMA』のはじまりは、埼玉縣信用金庫の事業「さいしんコラボ産学官」による。これは、大手企業が保有する開放特許を利用した商品アイディアを学生から募集し、コンテストを行うというもの。
その選考にあたり、アイディアをあらかじめ商品化する必要があった。その中の1つが、埼玉大学の学生たちが考案した、香りのする単語帳だった。
彼らは“キンモクセイの香りを嗅ぐと幼い頃の秋の記憶がよみがえる”というような、香りが脳に与える影響に注目。富士通がもつ開放特許「芳香発散技術」を活用し、香りの力を利用して覚える「香る単語帳」を思いついた。
単語帳は、試験会場にも持ち込めて本番直前まで使える。香りで緊張をほぐしたり、集中力をアップしたりすることも期待できる。
商品化を担当したのが、地元・埼玉県にある化成品加工会社のタイラだった。同社は長年、電化製品や医療機器の部品に使うゴムやプラスチックの加工を行ってきたが、自社製品を作るのは今回が初めて。手探りの状態で商品化が始まった。
もっとも悩んだのは、「香り作り」だった。『FLAROMA』として売り出そうとしていた香りは、「コンセントレーション(集中力)」「リラックス」「リフレッシュ」の3種類。
オリジナルの香り作りにこだわったが、アロマオイルは高価なため、商社は通さず、化粧品メーカーと直接取引することになった。タイラの近くに化粧品製造会社があったことも幸いした。3種類のコンセプトに合ったアロマオイルを持ち帰り、自分たちで調合をしてみることにした。
しかし、リラックスする香りひとつを取っても、いく種類もあり、どんな調合が適しているのか、あまりの数の多さに途方に暮れる始末。アロマの調合は専門家に任せることに決め、3種類の香りが出来上がった。