14世紀に創設されたイギリスの最高位勲章が青いリボンで縁取られていることから、最高位や一等賞の意味を持つ「ブルーリボン」。日本では映画賞が有名だが、鉄道友の会によって新しい鉄道車両へ贈られるブルーリボン賞がある。2018年で創設から60年となった同賞と、通勤車両を対象とするため1961年に創設されたローレル賞について、ライターの小川裕夫氏がその意義と歴史をレポートする。
* * *
近年、鉄道ファンは確実に多様化しているが、それらはインターネットの登場によって加速した。特に、SNSの普及により、情報交換や交流などは活発化している。
従来、鉄道ファンが情報を得るツールは鉄道専門誌が頼りだった。また、学生の鉄道ファンは、大学や高校などの鉄道研究会に所属することで知識を研鑽し、マナーを学び、そして同士の親睦・交流を深めてきた。
鉄道ファンを育成してきた鉄道研究会の役割には多大なるものがあるが、高校・大学の鉄道研究会のほかにも、鉄道愛好者による団体がいくつか存在する。その最大規模を誇るのが、約3500人の会員を抱える鉄道友の会だ。
「鉄道友の会は1953年11月に創設し、今年で創設65周年を迎えます。友の会の初代会長には新幹線の生みの親として知られる元国鉄技師長の島秀雄、初代事務局長は旧交通博物館の学芸員でもあり昭和天皇の第三皇女・孝宮和子内親王の夫だった鷹司平通が就任しています。つまり、単なる趣味の団体ではなく、鉄道業界に大きな影響を与えるとともに鉄道の発展に貢献する団体でもあるのです」と話すのは、事務局長の鹿山晃さん。
その鉄道友の会が、ほぼ毎年にわたって優れた鉄道車両に贈っているのがブルーリボン賞とローレル賞だ。
「ブルーリボン賞は1958年に創設された賞で、今年で60周年を迎えます。当時、小田急の3000形SE(Super Express)がデビューし、会員や鉄道ファンの間で大変な話題になっていました。鷹司事務局長が『ああいった素晴らしい車両に、何か賞を贈呈できないか?』と提案したことがきっかけとなって、賞が創設されたのです」(同)
賞創設のきっかけになった小田急3000形SEは、最高時速は145キロメートル。飛行機の機体をモデルにした超軽量高性能電車が評価されて見事に第1回ブルーリボン賞を受賞した。以降、ブルーリボン賞を射止めた車両は、1965年に新幹線0系、1991年に東武100系スペーシア、2014年に近鉄50000系しまかぜといった鉄道史に名を残す車両ばかりだ。
特に、小田急の特急ロマンスカーは1964年に3100形NSE、1981年に7000形LSE、1988年に10000形HiSE、1992年に20000形RSE、2006年に50000形VSE、2009年に60000形MSEが受賞しており、ブルーリボン賞を総なめにしてきた。今年デビューした70000形GSEもブルーリボン賞の最有力候補との呼び声が高い。