憲政史上初となる天皇の譲位によって、皇室には前例のない数々の変化が訪れる。そのなかでも、とりわけ大きく変わると考えられるのが、天皇家の「お金」である。膨大な量の開示資料から、その一端が垣間見えてきた。
皇室には「4つの財布」がある。天皇と内廷皇族(皇后、皇太子、雅子妃、愛子内親王)のプライベートな費用の「内廷費」。それ以外の皇族に支出されるこちらもプライベート用の「皇族費」。公務を始めとした公的な活動に使われる「宮廷費」。そして、宮内庁職員の人件費や物品費などの「宮内庁費」だ。特に先の3つを合わせて「皇室費」と呼ぶ。
ここでは、皇室のプライベートなお金である「内廷費」と「皇族費」の使い道を見てみよう。
天皇と内廷皇族に支出される内廷費は、年3億2400万円だ。所得税も住民税も課税されない渡しきりのプライベートマネーと思われているが、全額自由に使えるわけではない。
1990年の国会答弁によれば、内廷費は衣類や日用品などの用度費、社会事業への寄附などの恩賜金、交際費・教育費・旅行費、祭祀費などのいわゆる経費が9割を占める。特に使途の3分の1を占めるのが人件費だ。宮中祭祀を補佐する「掌典職」と呼ばれる職員の給料は、内廷費から支出される。
「政教分離の考えから、宗教色の強い祭祀に関わる人の給料を、公的なお金から支出することは難しいのです。そのため、私的行為であることを強調する意味でも、内廷費から支払われる」(皇室ジャーナリスト・山下晋司氏)