「終活」──。2009年に登場したこの言葉は、人生の“終わり”に向けた準備であり、天寿を全うするための助走を意味していた。ところが、この10年で「終活」は変わりつつある。人生の残された時間と向き合うことで、第2の人生を豊かに過ごすきっかけとなっている。それは、著名人も同じ。ファッションデザイナーのドン小西(67)が語った。
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つい先日、個人で抱えていた借金を一気に返済したんです。月々50万円ぐらいずつ払っていて、まだ4000万~5000万円が残っていました。借金があっても“死んじゃったら知らないよ”というスタンスの人もいるというし、分割で払っていった方がいいのにといろんな人に止められましたが、早く過去に整理をつけて、未来に向けての準備をしたかったんです。そういうのがあると“終活”も楽しめなくなるじゃない。結果的には、これからさらに頑張るぞと背筋が伸びる思いになった。もう、寝るときのパジャマも、ピッとおしゃれなのを着るようになってさ。
終活を意識するようになったのは5年前に犬を飼うようになってから。はじめは自分の生活リズムも崩されるし、大型犬だから教育もしなくちゃいけなくて、1年くらいは戸惑っていた。でも、自分の生活がペット一匹を飼う余裕もないのかということに気づかされてから考えが変わった。
僕と同年代でもいまだに仕事で“忙しい忙しい”と若い頃と同じように口癖になっている人がいる。そういうのは変化を怖がっているんだろうなって思うよ。
70を目の前にすると、仕事に追われて休日の楽しみもないような生活には疑問がでてきた。毎日タキシード着てモデルを引き連れて泡を飲みに行く──それにいつまでもしがみついていると思われたくない。僕の場合は人生の楽しみ方を考え直す時期だと考えて、違うことにエネルギーを向けることにした。