いま、銀行で13万6000台、コンビニで5万5000台あるというATM(Automatic Teller Machine=現金自動預払機)。前者の銀行ATMは、メガバンクも地銀も店舗リストラに伴って台数を減らしていく途上にある。一方、後者のコンビニATMは、その銀行ATM減少の受け皿化の過程にあるが、将来、ATMそのものが消滅するといった指摘も少なくない。
コンビニなど流通系のATMといえばセブン銀行(開業は2001年)。次いで、ショッピングモールや総合スーパー、系列コンビニのミニストップにATMを置いているイオン銀行(同2007年)、さらに10月15日に営業開始するローソン銀行が追いかけ、残るファミリーマートも遠からず銀行設立には動くだろう。
ただし、こうしたコンビニATMにも前門の虎、後門の狼ともいうべき課題がある。
1つは、日本のキャッシュレス比率はまだ20%とはいえ、キャッシュレス化の波自体は止めようもなく、現金を引き出すことや現金での決済シーンが徐々に減っていくことは避けられないこと。
もう1つは、コンビニ銀行は消費者がATMを利用するごとに入る提携銀行からの手数料が収益源だが、銀行経営がマイナス金利やAI(人工知能)の波などで圧迫されているため、これまでATMの引き出し手数料について24時間365日無料としていた、一般消費者に優しかった銀行までもが無料制度改変に動いている。
一定金額の預金額以下の利用者は手数料が有料となり、一定額以上ある人でも無料回数に制限が付く。この10月からは新生銀行が、来年1月からはソニー銀行がその改変を実施する。利用者にとっては痛手だが、そうなればATMからの引き出し回数を減らすことになるので、コンビニ銀行にとっても手数料収入の減少となる。
ローソンの竹増貞信社長は、ローソン銀行の事業方針説明会の際、「銀行ではなかったこれまでのローソンのATMでは、来店者がスルーして銀行ATMのほうに行ってしまい、ローソンでのATM利用比率が低かった」と語り、同時に「晴れて銀行となったことで、口座という金融サービスの根っこを持つことができた。現金のビジネスであれキャッシュレスのビジネスであれ、自前口座がすべてのサービスの起点になることが銀行を持つ最大の意義」としていた。
要は、従来のようなATM運営サービス会社にとどまっていてはますます先がなく、自前で口座を持てる銀行設立は、独自の金融サービスを展開していくうえで必須との認識だ。
逆に言えば、セブン、イオン、ローソン、さらに将来的にはファミリーマートも含めて、コンビニなど流通系のATMは単なる現金の出し入れ機能にとどまっていては先細り、やがて消滅の危機を迎えるリスクもあるのかもしれない。