【著者に訊け】堀越英美氏/『不道徳お母さん講座 私たちはなぜ母性と自己犠牲に感動するのか』/河出書房新社/1550円+税
今春、ついに小学校で正式な教科となった道徳の授業。「国の基準で道徳に成績をつけるなんて!」とお怒りの方もあろうが、『不道徳お母さん講座』の著者・堀越英美氏にとってそれは、日本人の道徳と歩みについて考える入口に過ぎなかったという。
「私には娘がいるのですが、学校でも『みんなで頑張って絆を深めよう』みたいな同調圧力があり、何か事情があって頑張れない少数派の意見はないことにされてしまうんですよね。一体何がそうさせるのか、私自身も含めた心の原点を探るには、明治以来の教育史を一通り遡る必要がありました。教科化を悪者にしても何も変わらないので」
本書では日本人の道徳観がどんな意図や教材の下に作られてきたかを具体的な根拠をもって検証。すると〈敵は大きすぎて、丸腰で立ち向かってはゆるふわ感動モードに流されかねない〉とあるように、最大のクセ者は〈感動〉だった!?
奇しくも取材日は大阪桐蔭VS金足農による高校野球決勝当日。『キャプテン』世代の著者も、『ドカベン』世代の筆者も、正直、気が気でない。
「いかにも昭和の子供ですよね(笑い)。私は昭和48年生まれのガンダム世代でもあって、みんなで力を合わせて戦ったりする物語に感動もしてきたし、それ自体は悪いことではないはず。ただ最近はその感動を徒に押し付け、少数派を退ける傾向が強くなっている気がして、『感動をありがとう』と言うことが絶対善かのようになったのはなぜなのか、私も知りたかったんです」