前述したように、裏千家の会員組織『淡交会』の会員数は約10万人だが、これは25年前の半分だ。加えて高齢化が目立ち、位が高い順に終身師範会員約5万5000人、終身正会員約2万8000人、正会員約1万8000人という逆ピラミッド型。会費は上位会員のほうが高く、高齢会員の“引退”が増えれば、運営は一気に厳しくなる。
「日本の淡交会の先細りは避けられず、今後は海外にも目を向けていかなければならない。にもかかわらず、“お膝元”であるハワイで大宗匠への不信感が高まっているのは心配です。
毎年正月に、裏千家の初釜が行なわれます。その第一席となると、政財界や文化人など各界の著名人が顔を揃える。10年ほど前、そこに“場違い”に見える若い男性がいたのです。その方は、あるアパレルメーカーの社長でした。大宗匠の後ろ盾がある佐藤さんが招いたのでは、という話でしたが、周囲は何も言えず、組織内の不信ばかり募った。
こんなことが続けば、裏千家の歴史と格式が傾いてしまわないかと現家元の宗室氏も、父である玄室氏と佐藤さんの関係に不安を募らせています」(同前)
宗室氏は裏千家の静かなる危機をどう受け止めているのか。9月18日朝、裏千家の京都の宗家である「今日庵」から出てきた宗室氏を直撃したが、口を真一文字に閉じたまま何も語らず、お付きのスタッフが「執事(広報)に聞いてください」と言うだけだった。改めて広報に宗室氏の見解、そして玄室氏と佐藤さんのそれぞれの見解を求めたが、「その件にはお答えしません」という回答だった。
裏千家の茶室が静寂を取り戻し、穏やかに湯の沸く音に耳を傾けられる日は、いつになるのか。
※週刊ポスト2018年10月5日号