日本で「入れ歯」を使っている人は2000万人超と推計され、毎日の生活に欠かせない存在だが、いま、入れ歯が原因で命を失う人が続出している。
東京医科歯科大学の調査では、朝食時に「総入れ歯」が外れて、咽頭部に詰まり死亡したケースが、「日常生活で起こる可撤性義歯の誤飲」(東京医科歯科大学・下山和弘ら)より判明した。
また、入れ歯を誤飲した54例中21例が、入れ歯の「バネ」によって食道や腸に孔が開いていた。敗血症などを起こせば、死に至る危険な状態である。
毎年正月には、1200人超が、餅を喉に詰まらせて窒息死している。実は「合わない入れ歯」による咀嚼力の低下が、原因の一つになっていた。
そして、入れ歯の悩みでダントツに多いのが、「痛い」「噛めない」。その理由を入れ歯治療の第一人者・深水皓三氏(銀座深水歯科・院長)に解説してもらった。
「入れ歯の型取りをする際、大半の歯科医が、ぎゅーっと強く噛ませます。すると、抜ける前の歯を支えていた歯槽骨の土手部分(顎堤)の粘膜が“圧迫された状態”の型になります。この型をもとに、歯科技工士が入れ歯を作るので、痛くて噛めない入れ歯になってしまうのです」
“無圧状態”で型取りするのが理想的だが、高度な技術が必要となるという。