「金持ちケンカせず」とはよく言うが、同じことは“高学歴”には当てはまらないかもしれない。東京大学と慶應義塾大学という、様々な分野で日本をリードする大学界の“両雄”が、教育論を巡って壮絶な罵り合いを繰り広げている。
きっかけは、〈東大の見識を疑う〉と題した1本の記事。読売新聞が運営するウェブサイトに元慶應義塾塾長・安西祐一郎氏のインタビューが掲載され(9月10日付)、そこで同氏が「東大の知」を否定したのだ。
背景には大学入試改革を巡る対立があった。センター入試に代えて政府が導入する「大学共通テスト」の英語については、英検やTOEIC、TOEFLといった民間業者による試験の結果を合否判断や出願の条件に採用する方針を打ち上出している。この制度設計責任者だったのが安西氏だ。
そんな最中の今年7月、東大の学内ワーキンググループが「見切り発車すれば受験生が迷惑を被る」として、「出願にあたって(民間の)認定試験の成績提出を求めない」という選択を第一とする答申を発表した。最終結論ではないものの、他大学の方針に強く影響することが確実視されることになった。
そして安西氏は先のインタビュー記事内で〈一読して、答申を書いた人たちは英語ができないに違いないと思った〉と怒りをぶちまけ、東大生の英語力そのものまで疑問視した。これに英米文学が専門の阿部公彦・東大教授がツイッターで〈もうちょい勉強して欲しいなあ〉などと反撃、大ゲンカ勃発と相成ったのだ。