国内

今上陛下の「お言葉」に込められた「伝統の継承者」の覚悟

天皇陛下80歳の誕生日を祝う一般参賀で手を振る両陛下 共同通信社

 今上陛下は平成を通じて何を国民に伝えたかったのか。文芸評論家の富岡幸一郎氏が30年間のお言葉を振り返り、そこに込められた「伝統の継承者」としての覚悟を読み解く。

 * * *
 天皇の「言葉」をひもといていくとき、そこに大きな特色があるのがここからも窺える。それは言葉が時間を孕み、空間の現前を超えて、永い「時」の流れにつねに関わっていることだ。今ここで起こっていることを深く知り理解するためには、空間のなかにあって同時に、時間の聖性に触れなければならない。

 考えてみれば平成の三十年間とは、空間が拡張し肥大化していくなかで、時間の感覚が失われていった時代であった。IT革命によって情報化社会は飛躍的な発展をとげた。インターネットによって地球の裏側にいる人間と一瞬のうちにコミュニケーションが取れるようになり、まさに空間の地球化が現出した。この空間の近さにたいして、時間という観念が希薄化する。しかし、「時」の感覚の喪失こそは、実は現代世界における人間最大の危機であり、魂の飢渇をもたらしているのではないか。

 宗教学者のエリアーデは、「『象徴』は直接の経験の平面では明らかではない実在の様相、世界の構造を示す力を持っている」という。この世界には人智を超えたものがある。その超越的な感覚を大切にするという意味で〈象徴〉は物事の根源性を持つということだろう。国民の安寧を祈る天皇の「言葉」の力の源はここにあるといってよい。

関連キーワード

関連記事

トピックス

大型特番に次々と出演する明石家さんま
《大型特番の切り札で連続出演》明石家さんまの現在地 日テレ“春のキーマン”に指名、今年70歳でもオファー続く理由
NEWSポストセブン
NewJeans「活動休止」の背景とは(時事通信フォト)
NewJeansはなぜ「活動休止」に追い込まれたのか? 弁護士が語る韓国芸能事務所の「解除できない契約」と日韓での違い
週刊ポスト
昨年10月の近畿大会1回戦で滋賀学園に敗れ、6年ぶりに選抜出場を逃した大阪桐蔭ナイン(産経新聞社)
大阪桐蔭「一強」時代についに“翳り”が? 激戦区でライバルの大阪学院・辻盛監督、履正社の岡田元監督の評価「正直、怖さはないです」「これまで頭を越えていた打球が捕られたりも」
NEWSポストセブン
ドバイの路上で重傷を負った状態で発見されたウクライナ国籍のインフルエンサーであるマリア・コバルチュク(20)さん(Instagramより)
《美女インフルエンサーが血まみれで発見》家族が「“性奴隷”にされた」可能性を危惧するドバイ“人身売買パーティー”とは「女性の口に排泄」「約750万円の高額報酬」
NEWSポストセブン
現在はニューヨークで生活を送る眞子さん
「サイズ選びにはちょっと違和感が…」小室眞子さん、渡米前後のファッションに大きな変化“ゆったりすぎるコート”を選んだ心変わり
NEWSポストセブン
屋根工事の足場。普通に生活していると屋根の上は直接、見られない。リフォーム詐欺にとっても狙いめ(写真提供/イメージマート)
《摘発相次ぐリフォーム詐欺》「おたくの屋根、危険ですよ」 作業着姿の男がしつこく屋根のリフォームをすすめたが玄関で住人に会ったとたんに帰った理由
NEWSポストセブン
悠仁さまの通学手段はどうなるのか(時事通信フォト)
《悠仁さまが筑波大学に入学》宮内庁が購入予定の新公用車について「悠仁親王殿下の御用に供するためのものではありません」と全否定する事情
週刊ポスト
男性キャディの不倫相手のひとりとして報じられた川崎春花(時事通信フォト)
“トリプルボギー不倫”の女子プロ2人が並んで映ったポスターで関係者ザワザワ…「気が気じゃない」事態に
NEWSポストセブン
すき家がネズミ混入を認める(左・時事通信フォト、右・Instagramより 写真は当該の店舗ではありません)
味噌汁混入のネズミは「加熱されていない」とすき家が発表 カタラーゼ検査で調査 「ネズミは熱に敏感」とも説明
NEWSポストセブン
船体の色と合わせて、ブルーのスーツで進水式に臨まれた(2025年3月、神奈川県横浜市 写真/JMPA)
愛子さま 海外のプリンセスたちからオファー殺到のなか、日本赤十字社で「渾身の初仕事」が完了 担当する情報誌が発行される
女性セブン
昨年不倫問題が報じられた柏原明日架(時事通信フォト)
【トリプルボギー不倫だけじゃない】不倫騒動相次ぐ女子ゴルフ 接点は「プロアマ」、ランキング下位選手にとってはスポンサーに自分を売り込む貴重な機会の側面も
週刊ポスト
ドバイの路上で重傷を負った状態で発見されたウクライナ国籍のインフルエンサーであるマリア・コバルチュク(20)さん
《ドバイの路上で脊椎が折れて血まみれで…》行方不明のウクライナ美女インフルエンサー(20)が発見、“危なすぎる人身売買パーティー”に参加か
NEWSポストセブン