ついにがん治療統計のタブーが破られたといっていい。国立がん研究センター(国がん)が9月12日、ある報告書を発表すると、全国紙やニュース番組が一斉に報じた。1100頁以上の長大な報告書に記されていたのは、全国の病院別に集計されたがん患者の5年生存率だった。
専門的ながん医療を提供する「がん診療連携拠点病院」など全国251施設で、2008~2009年にがんと診断された約50万人の患者が対象。乳がん・胃がん・大腸がん・肺がん・肝臓がんの主要5部位の5年生存率が、がんの進行度(ステージI~IV)ごとに発表されたのだ。
国立がん・がん対策情報センター長の若尾文彦さんが語る。
「医療施設にとっては治療結果を振り返り、今後の診療の参考にできます。また、病院を横に比較するものではありませんが、患者さんは治療する病院を選ぶ参考になると考え、今回公表に踏み切りました」
発表された「5年生存率」とは、がんの治療を開始してから5年後に生存している人の割合を示している。
「多くのがんにおいて、がんの治療を受けてから5年経過してもがんが再発しなければ、がんは『寛解』、つまり症状がほぼ消失した状態だと見なされます。そのため、5年生存率は治療効果を判断する重要な目安です」(新潟大学名誉教授の岡田正彦さん)
ただし、「生存率の高さ=治療技術の高さ」ではないと、前出の若尾さんは話す。
「合併症のある患者さんもいますし、高齢のかたや進行がんを抱える患者さんの多い病院は、生存率も低くなる傾向があります。生存率の高低がその病院の評価に直結するわけではないことに留意してもらいたいです」
とはいえ、そのデータを読むと病院によってこれほど数値に大きな差があるのかと驚く。「日本の医療は世界トップレベルだ」といわれ、全国どの病院で治療を受けても違いはあまりないと思われていたが、その認識が間違いであったことに気づかされる生々しいデータだ。特に肝臓がんでは、最も生存率の低い病院で1ケタ台のところもあった。自分の身を預けることを考えると、より慎重に病院を選ぶことが大切だと気づかされる。
今回、女性セブンは公表された全国251病院の中から、偏りを避けるためにデータの多い患者数100以上の病院に絞って独自に集計し、ステージI~IVの全体での5年生存率の上位100病院をランキング形式でまとめた。