起業家のイーロン・マスク氏率いる宇宙開発ベンチャー、スペースXが計画する月周回旅行の搭乗員として、日本のアパレル通販サイト「ZOZOTOWN」の前澤友作氏(42)と契約を結んだことを発表して世界中を驚かせた。もともと「人類の火星移住」という壮大すぎる夢を追っていたマスク氏だが、なぜ月旅行なのか。そして、なぜ前澤氏を選んだのか。『イーロン・マスク 世界をつくり変える男』などの著書がある経営コンサルタントの竹内一正氏がレポートする。
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これまで月の周回軌道に乗った人はアポロ8号、10号などで計24人いた。そのうち、月面に降り立った人は12人。すべてアポロ計画で、民間人はいない。
今回スペース X が発表した月旅行は、月面着陸ではなくあくまでも周回だが、2023年、民間人として初めて月の周回に旅立つのは日本人となった。その月旅行に使用するのは現在建設中で全長118メートルの巨大ロケットBFR(ビッグ・ファルコン・ロケット)だ。
BFRは人類を火星に移住さるために計画されたロケットで一段目ロケットと宇宙船からなり、液体メタンを燃料として、新型「ラプター・エンジン」を31基搭載する。一方、宇宙船は全長55メートル、最大100人の宇宙飛行士が搭乗できる設計だ。
今年の2月にスペースXは従来のファルコン9ロケットの3倍の推進力を持つファルコン・ヘビーの打ち上げに成功して世界に衝撃を与えた。月旅行はこのファルコン・ヘビーで行うことを当初は計画していたが、マスク氏は「BFRの研究を進めた結果、BFRのほうが月旅行を早く実現できると方向転換した。
◆ZOZOTOWNの強さの秘密
ところで、前澤友作とはどんな人物なのだろうか?
人気ブランドを数多く取り揃えるファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を運営するスタートトゥデイの社長。同社は創業からわずか10年で時価総額1兆円にまで成長し、年間の購入者数は700万人を超えた。
スタートトゥデイの連結売上は約984億円で営業利益は約327憶円。アパレルのネット通販では異例と言える高い利益率は注目すべき点であり、それは高度な物流機能に支えられている。
楽天などは商品の発送は各店舗が行うことになっているが、小規模の企業が保管、梱包、発送を行うのは負担が大きい。一方、ZOZOTOWNは、各店舗の商品を自社の施設で預かり、写真撮影、梱包、発送までを代行することで競合他社より高い受託手数料を得ることに成功している。
いまや総資産約3300億円といわれる前澤氏。吉本のお笑い芸人、間寛平の若き日を彷彿させる容貌と言ったら怒られるかもしれないが、彼の認知度は年代によって大きく違う。ZOZOTOWNの顧客の平均年齢は約33才で、約7割が女性ということからも、20~30代の女性には馴染みがあっても、50代以上の男性にはピンとこない経営者かもしれない。