史上初となる2度目の甲子園春夏連覇を達成した大阪桐蔭の新チームが始動し、秋季大阪大会を順当に勝ち上がっている。この夏の甲子園ベンチに入っていたメンバーはわずか2人で、いずれも控え選手。二刀流の根尾昂に、俊足・強打の外野手である藤原恭大といったドラフト1位候補をそろえ、“最強世代”の称号を得た前チームと比べれば、新チームは経験のある選手が少なく、小粒感は否めないだろう。
しかし、初戦となった堺工科戦(9月15日)で、将来の怪物候補が暴れ回った。1年生ながら3番に座った一塁手・西野力矢だ。
初回にレフトスタンドに2点本塁打を、3回にはインコースに甘く入ったスライダーをやはりレフトスタンドに運ぶ特大のグランドスラムを放ち、あっという間の6打点。さらに第3打席もバックスクリーンに届きそうなフライを放ち、まさかの3連発かと度肝を抜く公式戦デビューを飾った。
試合後、真っ先に2本塁打の手応えを聞かれるも、取材慣れしていない西野はなんとも初々しく、うまく言葉がつながらなかった。
「手応えは……ありました。思いっきり打ったら入った……ので、嬉しいです。初戦を何としてでも勝つということで、綺麗なヒットじゃなくて、詰まってでもヒットに……という気持ちで打席に入りました」
和歌山県紀の川市出身の西野は、中学時代はリーグ無所属の南大阪ベースボールクラブに所属し、「力矢」の名前のとおり力強いバッティングで、通算35発を放ったという。当時の愛称は「ゴンちゃん」で、取材陣の前では由来を語らなかったが、その体型(180センチ、86キロ)からして昔、NHK教育テレビの番組「できるかな」に登場したゴン太くんであろう。こちらの予想を本人にこっそり確認したら、否定せずに苦笑していた。
大阪桐蔭に入学後は、下級生ながら練習試合などで結果を残し、今回の2発で通算本塁打は9本に達した。同校の西谷浩一監督は、西野に期待を寄せる。
「ロングヒッターで良いものを持っている子。このチームでは軸を打ってもらいたいと思っています。1年生なので、(責任を)背負うことなく、のびのびとやってくれたらいい」
今春のセンバツの準決勝前日、生駒にある大阪桐蔭のグラウンドを訪ねたときのことだ。ちょうど初練習に臨むフレッシュな1年生たちの姿があった。ある意味で、もっとも目立っていたのが西野だ。180センチの身長ながら、体重は98キロ。肉体を鍛え上げている先輩や同級生の中にあって、西野はぽっちゃり……いや、でっぷりした体型だったのだ。
グラウンドの周りを走るトレーニングでは同級生に必死についていき、インターバルの間はぜえぜえと口から息を漏らす。日本一の大阪桐蔭の練習に本当について行けるのだろうかと、心配になったものだ。
しかし、1か月半後。大阪桐蔭の練習試合の補助員を務めていた西野の姿を見て、驚いた。肉体が見違えるように引き締まっていたのだ。