NHK連続テレビ小説『半分、青い。』が9月29日に最終回を迎える。「命がけで執筆した」と脚本を担当した北川悦吏子さん(56才)は語ったが、この発言は決して大げさではない。すでに執筆を始めていた2017年の夏、彼女は担当医からこう言われていた。
「もし、朝ドラの期間にオペが必要なほど体調が悪くなっても、必ず1か月で戻します」
心強い言葉ではあるが、裏返せば、そうなる可能性は少なからずあったということだ。
「私には内科医と外科医、2人の主治医がいるのですが、彼らには以前から相談していました。それでもやっぱり体調面で不安はあって、私が涙目で『大丈夫です! やります!』と言っているのを聞いていたNHKの人たちはもっと不安だったろうと思いますね。何も言わないでいてくれたけど(笑い)」(北川さん、以下「」内同)
実は北川さんが患っているのは、今回のドラマのヒロイン・鈴愛の状態と同じ2012年に患った片耳の失聴だけではない。1999年に「炎症性腸疾患」が見つかり、以来痛みに七転八倒しながらの闘病生活が続く。
2010年には大腸全摘出のオペを受けて症状は落ち着いたが、今も体調は不安定。常に自分の体と向き合いながら仕事をしている。
「万が一のことがあったとき備えておかなければいけないな、と思っていた矢先に、『ちゅらさん』や『ひよっこ』を書いた脚本家の岡田惠和さんと会う機会がありました。『もしものときは助けてくれる?』と言ったら『もちろん、喜んで』と言ってくれました。
いろんな記事で岡田さんの方から申し出たみたいになっているけど、間違いなく私が頼んだんですよ(笑い)。実際、2度入院することになりましたが、なんとか最後まで自分で書き終えることができました。締め切りを破ったことは一度もないです」
自身も病気と闘いながら書いた、片耳失聴のヒロイン。しかし作品に暗さはみじんもない。毎日の放送を見ていると、鈴愛にハンディキャップがあることを忘れているのだ。
「私自身、片耳が聞こえないことも、病気を抱えていることも忘れているときがありますよ。それがリアルな生活だと思う」
そう。北川さんが描く世界には“リアル”が詰まっている。それが見ている側の心に刺さるのだ。それがもっとも表れるのが、せりふ。
実際、SNSなどではストーリーだけではなく、登場人物が口にしたせりふについて熱く語るコメントが多い。北川さん自身が経験したり、感じたりしたことがせりふになっているからだ。
「私は1mmでも作品をおもしろくしたいから、リアルを入れる。そうすると物語が強くなるんです」
たとえば、豊川悦司(56才)演じる少女漫画家の秋風羽織のせりふだ。