看板商品でよく知られた有名企業が、想像もつかないような“サイドビジネス”を展開していることがある。
艶やかに光る茶色いテーブル。この重厚な天板が、数十年にわたりウイスキーを寝かせてきた熟成樽で作られているとは驚きだ。「山崎」や「ザ・プレミアムモルツ」で知られるサントリーには、「家具事業」という知られざる部門が存在する。
1970年代から研究を始め、1998年から本格的な事業を始めた。木材の歪みを修正する応力緩和機なども自社開発した理由は、年間数万個を焼却していた樽が、家具材として活用できる「商材」だと気付いたからだ。
樹齢数十年のオークの巨木は、硬さや木目も家具に適していた。
「熟成樽として例えば50年ほど使ううちに原酒が染み込むと、独特の風合いとしっとり感をまとう。しっかりしているので一生モノですよ」(サントリーHD樽ものがたりグループ安田善広氏)
テーブルで17万円と決して安くはないものの、ウイスキーの愛好家に好評だという。さすがに家具から馥郁たる香りが漂うことはないが、「ウイスキー人口は増えているので、もっと多くの方に使っていただきたい」(同前)と自信をのぞかせる。
※週刊ポスト2018年10月5日号