心臓性の突然死で亡くなる人の数は、日本全国で毎年約10万人いると推計されている。思いがけない発作のトリガー(引き金)となるのが不整脈だという。命に関わる「キラー不整脈」のひとつが「心房細動」だ。心臓血管研究所所長の山下武志医師が指摘する。
「心房細動とは、心房が拡張した状態のまま1分間に400~600回の速さで震え、血液を心室に送る働きが鈍くなり、血が固まって血栓ができやすくなる不整脈のことです。
この血栓が脳に運ばれると、脳の血管が詰まって脳梗塞を引き起こします。心房は大きな器官ですから、それだけ大きな血栓ができやすい。そのため、心房細動によって起こった脳梗塞は、太い血管を詰まらせて重篤化しやすく、約3割の患者の社会復帰が困難になったという調査結果があります。
また、心房細動を放置すると心臓の機能が低下し、全身に十分な血液が送り出されず、心不全になることも多い」
不整脈専門の東京ハートリズムクリニック院長・桑原大志医師が指摘する。
「心臓では、右心房にある『洞結節』という部分が電気を発して、脈拍を一定にコントロールしています。ところが、心房細動にかかった人は、洞結節の働きを止める『洞不全症候群』にもかかりやすくなる。すると、脈が5~10秒だけ止まり、一瞬意識を失ってしまうのです。その間に脳に血液がいかないとふらついて転倒し、階段から転落するなどの事故を起こし、打ちどころが悪いと命を落としてしまいます」