日本には多くの名建築があるが、世界平和記念聖堂など数々の名建築を手がけた建築家・村野藤吾が、大阪万博訪問客のために意匠を凝らした古都の宿坊が「信貴山朝護孫子寺・成福院信徒会館」だ。これまで500軒超の名建築宿に泊まった紀行作家の稲葉なおと氏が案内する。
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1970年、大阪万博への訪問宿泊客を受け入れるために建てられた、村野作品では唯一の宿坊。同年、村野は帝国ホテル茶室等、合わせて5軒の宿泊関連建築を設計・竣工させている。
地階に大浴場、1階はロビー等、2階に客室、3階は大広間。外観、客室、階段の手摺り、大広間の天井などが村野建築としての見どころ。日々の掃除と毎年の大掃除による手入れが行き届き、コンクリート打ち放しの壁、絨毯、建具の木枠や柱などに竣工当時の素材感を今も残す。
『信貴山朝護孫子寺・成福院信徒会館』
・住所:奈良県生駒郡平群町信貴山
・チェックイン16時/チェックアウト9時半
・料金:1泊2食付きひとり1万1880円~(税・サ込)(2名様より受付)、15名以上の団体は要問い合わせ
◆撮影・文/稲葉なおと
【プロフィール】いなば・なおと/紀行作家・写真家。1959年生まれ。東京工業大学建築学科卒。長編旅行記『遠い宮殿』でJTB紀行文学大賞奨励賞受賞。『0マイル』『まだ見ぬホテルへ』『匠たちの名旅館』『モデルルームをじっくり見る人ほど「欠陥マンション」をつかみやすい』など著書多数。11月5日に学士会館(東京・千代田区)にて講演「『建築家の宿』の知られざる物語」開催。
※週刊ポスト2018年10月5日号