今も昔も、猫が人の心をつかむのは変わらないようで、江戸時代の浮世絵には猫をテーマにした作品が多い。なかでも「三毛猫」が描かれることが多く、昔から日本でかわいがられていたことがわかる。
「三毛猫の原産国は日本です。“三毛猫”という品種がいるのではなく、黒・白・オレンジ(茶)の3色の毛を持つ猫のことを指します」
とは、猫専門病院Tokyo Cat Specialistsの獣医師・有田早苗さんだ(「」内、以下同)。さらに三毛猫のなかでも、色や柄によって呼び名が変わるという。
「例えば、基本の3色より黒はグレー寄り、オレンジはやや肌色やベージュに近いなど、全体的に色が薄い三毛猫を“ダイリュート三毛”といいます。また、体の大部分が白く、残りの2色がブチ模様の猫を“トビ三毛”。体のどこかに縞模様がある猫を“縞三毛”などと呼びます」
そして不思議なのが、三毛猫はほとんどがメスで、オスが生まれる確率は、わずか3万分の1ということだ。
◆オスは幸運をもたらす神として南極観測隊にも同行した
なぜ三毛猫はメスが多いのか。これには、染色体が関係しているという。性別を決めるのは、“性染色体”。この染色体は1対で構成され、両親からそれぞれ1本ずつもらう。
「性染色体にはX染色体とY染色体があり、XXだとメス、XYだとオスとなります。つまり、最初に父親からもらう性染色体がYでないと、オスは生まれません」
性染色体をもらう時に、毛色を決めるカラー遺伝子も両親からそれぞれ受け継ぐ。三毛猫になるには、黒・白・オレンジ(茶)の3つの毛色が必要となるが、ここで問題が。黒い毛になる遺伝子と、オレンジ(茶)の毛になる遺伝子は、どちらもX染色体にしか含まれないのだ。しかも、1つの染色体には、黒かオレンジのどちらかしか存在できない。
「つまり、黒とオレンジの毛を持つには、Xが2つ必要であり、XYの染色体を持つオス猫には不可能、ということになるのです」
このように理論上、オスは三毛猫になれない。だが、ごく稀に、「XXY」とX染色体が1つ多いオスもおり、その場合は、オスの三毛猫が生まれることがある。しかし、そういったオス猫は染色体が異常なので、生殖機能がない場合もあるという。
このように、オスの三毛猫が誕生する確率は極めて低い。その希少性から昔は幸運をもたらす福の神と考えられ、第1次南極観測隊は、オスの三毛猫を連れて行ったほどだ。
あなたの周りにいる三毛猫の性別は? もしかしたら意外と身近に、“幸運のオス三毛猫”がいるかもしれない。
※女性セブン2018年10月11日号