地方へ行くと、古い鉄道車両が大切に今でも使用されていることが少なくない。かつて、そういったクラシックな車両を鉄道友の会が表彰する「エバーグリーン賞」という制度が存在した。どんな目的で設置され、なぜ廃止されたのか。ライターの小川裕夫氏が、同賞と、いま新たな意味を持ちつつある古い車両の意義についてレポートする。
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かつての鉄道車両は、メーカーや運行する地域によって性能はもとより外観などバラエティに富んでいたと言われる。一方、最近の鉄道車両は個性が消失し、往年のファンから「旅をしていても、みんな同じような車両ばかりで面白味に欠ける」と評する声も耳にする。
そうした声には、少なからず懐古主義的な思いが含まれている。しかし、以前に比べれば鉄道車両の画一化が進んでいることは確かだ。
鉄道車両の画一化が進んだ理由は、高度経済成長期に都市圏で輸送量が増大して車両を量産化しなければならなかったこと、どこの路線でも走れる方が効率的な運用ができることなどが挙げられる。
また、鉄道車両に盛り込まれる技術が高度化したことも車両の画一化に拍車をかけた一因でもある。
技術が高度化すれば、当然ながら開発費や製造費は膨れ上がる。しかし、日本の人口は減少傾向にあり、地方鉄道は特に利用者減が顕著。採算面で先行きが明るいとは言えない。そうした財政的な事情もあって、鉄道車両メーカー間では技術の標準化が進んだといわれる。
例えば、2017年に山手線に登場したE235系は、JR東日本と鉄道車両メーカーが総力を挙げて開発した。E235系の外観は、それまでの常識を覆した斬新なデザインだと言われる。特に、顔の部分はこれまでの常識を打ち破るような大胆なデザインだったので話題になった。これまでE235系は山手線にしか走っていなかったので、斬新なE235系の顔は、山手線の顔として定着した。
ところが、9月4日にJR東日本はE235系の新造を発表。新たに製造されるE235系は、2020年度から総武線快速・横須賀線でも運行する予定とされた。また、E235系は総武線快速と直通運転をしている外房線や内房線、成田線、鹿島線にも乗り入れる。つまり、これまで山手線の電車だったE235系は、今後は山手線だけの電車ではなくなる。
技術の高度化によって車両の画一化が進む一方、独自の車両を用いて観光需要を掘り起こそうとする動きもあった。