平成の世も残すところあと半年あまりとなった。平成最後の終戦記念日の「全国戦没者追悼式」で今上陛下はあらためて「ここに過去を顧み、深い反省とともに、今後、戦争の惨禍が再び繰り返されぬことを切に願い」、追悼の意を表された。現行憲法下で即位し、「象徴天皇」のあるべき姿を模索しながら、慰霊の旅を続けた今上陛下のお言葉は、多くの国民の胸に刻まれたことだろう。
今上陛下に限らず、歴代天皇の言葉は民の幸せを祈って発せられ、また民を導き、そして日本という国を形づくってきた。文芸評論家の富岡幸一郎氏が、あらためて噛みしめたい今上陛下のお言葉を紹介する。
●平成11年 「ご即位10年」の記者会見
〈私の幼い日の記憶は、3歳の時、昭和12年に始まります。この年に盧溝橋事件が起こり、戦争は昭和20年の8月まで続きました。したがって私は戦争の無い時を知らないで育ちました。この戦争により、(中略)数知れない人々の命が失われました。(中略)今日の日本が享受している平和と繁栄は、このような多くの犠牲の上に築かれたものであることを心しないといけないと思います。〉
「今上陛下の原点は、少年期に『戦争の無い時を知らないで育ちました』という言葉にあろう。『平和』の重みと戦没者への哀悼・慰霊の思いは、昭和帝から今上へとかくして受け継がれてきた」(富岡氏、以下「」内同)
●平成8年のお誕生日会見
〈沖縄は、先の大戦で地上戦が行われ、大きな被害を受けました。沖縄本島の島民の3分の1の人々が亡くなったと聞いています。さらに、日本と連合国との平和条約が発効し、日本の占領期間が終わった後も、20年間にわたって米国の施政権下にありました。このような沖縄の歴史を深く認識することが、復帰に努力した沖縄の人々に対する本土の人々の務めであると思っています。〉
「前年(平成七年)に沖縄県で米海兵隊員による少女暴行事件があったが、日米地位協定によって日本側の被疑者の取り調べは阻まれた。皇太子時代から両陛下の沖縄への深い思いは一貫してあった」