休憩を挟んで再び喬太郎。途中までは普通の『子ほめ』だが、八五郎がご隠居の家を出ると三味線が入って「その道中の陽気なこと」と上方落語ばりの台詞が飛び出す。その後はまた普通の『子ほめ』に戻るが、ラストに来て突然芝居がかりの台詞回しになって三味線が入り、「東西子ほめ、まずはこれまで」でサゲ。終演後に貼り出された演目表では『世辞桜子褒厄誉』となっていた。
トリの鯉昇は『千早ふる~モンゴル編~』。もともと鯉昇の『千早ふる』は知ったかぶりのご隠居のキャラが異彩を放つ爆笑編だったが、最近は竜田川を「モンゴル力士の名」として演じているのでこう呼ばれている。南千住のホステスだった千早とモンゴルで再会した竜田川は千早をネパールまで張り飛ばしてジ・エンド。それで納得できない八五郎がご隠居を問い詰めると、短歌の「みそひともじ(三十一字)」を千早の持っていた味噌に掛けた独自のサゲへ。これまたバカバカしくもお見事だ。全編オリジナル・ギャグ満載、鯉昇ならではの最強の一席だった。
●ひろせ・かずお/1960年生まれ。東京大学工学部卒。音楽誌『BURRN!』編集長。1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。『現代落語の基礎知識』『噺家のはなし』『噺は生きている』など著書多数。
※週刊ポスト2018年10月12・19日号