クルマの免許取得者やクルマの保有率が減っている“クルマ離れ”について、「何でだろうと議論する相手が、私の場合身近にいる」と述べていたのは、日産自動車で専務執行役員を務めている、夫人の星野朝子さんを指している。
若年世代は、“旅行離れ”、“クルマ離れ”だけでなく、さらに“ビール離れ”も加速していると言われる。酒は家飲みが基本で、安く早く酔えるということで高アルコールの缶チューハイこそ人気だが、ビールは苦みが敬遠されるうえ、缶チューハイより価格が高いので、これまた若者には人気がない。
その“ビール離れ”についても、星野氏は議論できる相手が身近にいる。キリンホールディングスの磯崎功典社長がその人だ。星野氏はかつて、あまたの名ホテルマンを生んできた米国のコーネル大学に留学しているが、磯崎氏も同大学に留学経験があり、両氏は親しい間柄だ。星野リゾートが出資していた軽井沢のヤッホーブルーイングをキリンに譲渡したのも、その縁があったことが大きい。
逆に言えば、旅、クルマ、酒それぞれに縁遠くなっている若年層の消費や行動分析という点で、星野氏は旅行業界だけの “単眼”でなく“複眼”で考えることができるだろう。「BEB」がその解になるかどうかは未知数だが、若者の生き方や嗜好に寄り添ったものにはなっているはず。だから余計、その成否が注目されるといっていい。
●取材・文/河野圭祐(ジャーナリスト)