9月25日の引退会見で「(相撲)協会と戦うつもりはない」とした、貴乃花親方の言葉を額面通りに受け取る協会関係者はいない。協会の裏事情をほとんど把握しているのではないか、新たな相撲がらみのビジネスを立ち上げるのではないか、一門で縛り付けておとなしくさせるはずが引退するなんて考えていなかった、など様々な思惑や憶測が飛び交い、協会内の混乱は収まる気配がない。
貴乃花親方を屈服させるという狙いが失敗した上に、「一門支配の強化」もうまくいくかわからない。今回の貴乃花親方の引退騒動で明らかになったのは、どの一門も決して一枚岩ではないという現実だ。
貴乃花親方を受け入れようと具体的な動きを見せたのは、5つの一門で最も親方の数が少ない弱小の伊勢ヶ濱一門だった。
「伊勢ケ濱親方(元横綱・旭富士)は、一連の騒動の発端になった日馬富士の師匠ですが、一門の票を増やしたいし、貴乃花人気にはあやかりたい。一門内の若手親方の進言もあった。
しかし、伊勢ヶ濱一門には“反貴乃花”を鮮明にする横綱・白鵬がいる。所属する宮城野部屋の親方(元前頭・竹葉山)を動かして、受け入れに猛反対させようとしていた。結局、親方の受け入れは一門が満場一致で決めなければならないから、引退騒動がなくても、貴乃花親方を引き取る一門はなかっただろう」(元親方)
他の一門に所属しながら、貴乃花親方の改革姿勢に共感する“貴シンパ”たちも動ける状態にはなかった。