30代前半の医師が、こちらが症状を説明し終わらないうちに「わかりました」と言ってカルテに病名らしきものを書き始める。女性の泌尿器科医から「前立腺肥大の可能性」を告げられる──患者の頭の中に「この医者、本当に理解している?」と疑問が浮かんだ時、どう判断すればいいのか。
「60歳を過ぎてから左目の視野が狭まってきたので、近所の眼科に行ったら60代後半と思しき医師から緑内障と診断された。その後、点眼薬を使って治療を続けたが、視野は狭まる一方だったので、不安になり総合病院で診察してもらった。すると担当の若い医師が『CTスキャンを撮りましょう』というので検査したら、原因は脳梗塞だった」
都内在住の竹田義一氏(仮名・62)が今春、経験した話だ。幸い初期の脳梗塞だったため血栓溶解剤を使った薬物治療で、今は快方に向かっているという。誤診の理由を「二本松眼科病院」眼科専門医の平松類氏が解説する。
「大脳皮質にある視覚野に血栓の詰まりである梗塞ができると、視野狭窄など緑内障と同じような症状が出ます。経験に頼りがちな高齢医師ほど症状だけを見て、入念な検査をする前に緑内障と診断を下してしまうケースがある」
欧米では、誤診リスクも含めた医師の治療実績(パフォーマンス評価)に着目する傾向にあるという。
「そんな背景から治療実績と関係する医師の特徴は何かが研究されている。なかでも、近年医師の年齢と治療実績の相関関係を数値化した研究結果に大きな注目が集まっています」(医療経済ジャーナリストの室井一辰氏)