父が急死したことで、認知症の83才母を支える立場となった女性セブンのN記者(54才・女性)が、介護に関する実体験や感じたことを記録するこの連載。今回は、母の“筋トレ”に関するエピソードを紹介します。
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私は今、不調連発の更年期真っただ中。肉体の衰えを実感するからこそ、親が老いる悲しみにも寄り添えるのだが、筋肉というのは別モノらしい。デイケアなどで日々鍛えている母の力強い小走りには、目を見張るものがあるのだ。
更年期障害は、今も昔も女性誌の定番テーマ。10年くらい前、私もよく取材していた。更年期は閉経前後の約10年、女性ホルモン激減の影響でさまざまな不調が現れる。
ちょうど母に要介護の認定が出た6年前頃、私にも更年期症状が出始めた。私の場合はひどい疲労感が主な症状で、昔はどんな無理でもきいてくれた体が、もう何も言うことをきいてくれなくなった。
不思議なことに仕事中は気が張って動けるのだが、仕事終わりにひとりで道を歩いていて、一歩も前に進めなくなることもあった。しかし、健診で別の病気がないことはわかっていたので、休憩や昼寝をまめにして、コントロールできているつもりでいた。
「仕事や母の用事のときに力を出せるよう、普段はできるだけ動かないようにしよう」というのが、私なりの更年期対策。元来運動が嫌いなので、少々不合理なこの対策には妙に満足。日に日に体の動きが鈍くなることも軽視していた。
ある日こんなことがあった。長時間パソコンの前に座っていてトイレに立つと、気持ちと上半身はトイレ方向に向かうのに、足がついて来ない!
体が前のめりに倒れ、最後の最後に足が出て大転倒は免れたが“体が言うことをきいてくれない”恐怖を本格的に味わい、冷や汗が出た。
◆週3日ペースで鍛える母。駅の階段も驚きの小走り!
私の運動嫌いは母ゆずり。母は自転車にも乗れない運動音痴だ。60~70代の頃には血圧が高めで、医師から安静を指示されることも多くなり、78才で認知症に。母は“何をするにも手助けが必要な人”だと思い込んでいた。
ところが実際はかなり違っていた。通院などで並んで歩いても、母は私にまったく遅れずについて来る。駅の上り階段でもしっかり手すりを手繰りながら「Nちゃん(私のこと)、急いで」と、小走りに上って行く。筋肉を鍛えていない私だからこそわかるのだが、階段を駆け上がれるのは相当な筋力だ。
思えば母は血圧安定のために医師からすすめられた散歩を日課にし、認知症になったことで導入した介護サービスでは週3回、体の機能を鍛えるリハビリ系デイケアを入れた。理学療法士が指導する筋トレは、高齢とはいえ同年代が並んで行うと、小さな競争心もわくらしい。お茶の時間も含めて1~2時間、じっくり体を動かすことに集中する。
これを毎週3回、介護サービスを利用し始めて今年で6年、習慣として継続している。私がたまにネット動画を見ながら、疲れない程度に行う体操とは桁違いの運動量だ。