国が推奨する公的な「集団がん検診」には、大きな問題が隠されている。発見精度が低く、見落とし、見逃しが各地で多発しているのだ。中でも死亡数が多い大腸がん検診で実施される検査には問題点が多いと指摘するのは、ジャーナリストの岩澤倫彦氏だ。
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国は大腸がん検診として「便潜血法」を推奨度Aと定めている。大腸内に発生したがんに、便が接触すると出血が起こる。これを検知して精密検査につなげる手法だ。
大腸がん治療の第一人者である、がん・感染症センター都立駒込病院の消化器内科部長・小泉浩一医師は、多くの人が便潜血法を誤解していると指摘する。
「便潜血法で陽性反応があっても、実際に大腸がんがある確率は1%程度。大腸内視鏡検査を受けても、概ね異常なしになります」
つまり、検査に引っかかっても、がんが見つからないことが繰り返し起きる場合もある。だが、これこそが集団検診の特徴だという。
「行政の検診は、個人のことを考えるのではなくて、地域の集団をいかに低コストで、健康を管理できるかという視点です。統計的な観点で見れば、便潜血法による大腸がんの死亡率減少効果は、確実にあると証明されていますが、これは行政と個人と認識のズレがある部分です」
“陽性だったけど、がんではなかった”ということであれば、患者は胸を撫で下ろす。ただ、逆の場合もあるという。小泉医師によると、便潜血法で反応しない大腸がんもあるのだ。